【7月5日 AFP】いつも通りパンと野菜が入った箱を積んだ慈善団体のピックアップトラックが、南アフリカのある町にやって来た──今日は、50キロ以上の新鮮なアンテロープの肉という貴重な食料も載せている。

 このアンテロープは、野生動物の狩り場を観光客に提供する農家らによって数日前に射殺されたものだ。農家らの観光ロッジは、新型コロナウイルスの感染拡大防止策としてロックダウン(都市封鎖)が始まった3月に閉鎖された。

「最後に肉を買ったのがいつだったか思い出せない」と、住人のテボゴ・マブンダ(Tebogo Mabunda)さん(40)は喜びのあまり叫ぶように言った。

 町では普段、マブンダさんのような非公式労働者(インフォーマル・ワーカー)が多数、ロッジやスパで雑用の仕事をし、どうにか暮らしている。だが、3月に観光業が停止して以来、仕事がなくなってしまった。

 家族4人を養っているマブンダさんだが、いまやせっけんや主食であるトウモロコシの粉も満足に買えない状況だ。

 地元でスーパーを経営するピートさん(仮名)は、食べ物の寄付を求める人が増えていることから、自身が所有する食肉処理場で野生動物の取り扱いを始めた。「ある日、狩り場を提供する農家たちと狩りに出かけた時に、これ(獲物)をどうするんだと思った」ことがきっかけだったという。

 ピートさんは、地元の観光ロッジに動物の死骸を自分の店に寄付してくれるよう頼んだ。慈善団体のつながりを通じて、過去2か月で1.5トン以上のアンテロープの肉を配布したという。

 ピートさんは「ここは貧しく、経済は破壊されてしまった…その上、食べていかなくてはいけない」と言った。「主な収入源は観光業だったが、それもいまや全くなくなってしまった」