【6月8日 AFP】タイから逃れた民主派活動家が隣国のカンボジアで3日前に拉致されたとみられ、活動家の家族が7日、解放を訴えた。またタイの首都バンコクでは8日、失踪に抗議する人々がカンボジア大使館に調査を要求した。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が、目撃者の話と中国中央テレビ(CCTV)が放送した監視カメラの映像を挙げて主張したところによると、元陸軍大将のタイのプラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)首相率いる政権を批判していたワンチャルーム・サッサクシット(Wanchalearm Satsaksit)氏は4日、カンボジアの首都プノンペンで黒塗りの車に引きずり込まれた。

 だが、カンボジア警察は、同氏が姿を消したとされることについては何も知らず、捜査を開始するつもりはないと話している。

 同氏の家族は「ワンチャルームを解放してほしい。私たちは、希望を持ってそれを待ち望んでいる」「強いられた失踪は、これで最後にしてほしい」と述べた。

 バンコクのカンボジア大使館では8日、公の場での集会を禁じる新型ウイルス関連法に違反するも、20人超がピケット(ライン)を張って抗議。

 警察官らが見つめる中、「ワンチャルーム氏はどこ?」と記されたポスターを掲げ、調査を要求する書簡を提出した。

 ワンチャルーム氏は、政府を厳しく批判するページをフェイスブック(Facebook)で運営していたことで、指名手配されていた。

 タイ国家警察によると、同氏は「混乱」を生じさせる文書を禁じる同国の刑法のコンピューター犯罪法第116条に違反したとみられるという。

 だが、AFPに対し、ワンチャルーム氏はタイ当局から指名手配されているものの、(警察は)第三者からの情報提供に関する厳格な規則や規定に従っていると説明。

 タイ警察は、ワンチャルーム氏の所在について「分からない」としている。

 タイ当局は2014年5月のクーデター以来、政府に批判的な民主派活動家、とりわけタイ王室を批判した疑いが持たれている人々を摘発すると明言している。

 HRWによると、著名なタイ人活動家少なくとも8人が直近のクーデター後、ラオスやカンボジア、ベトナムへ逃げ、その後行方不明になっているという。(c)AFP