【6月8日 AFP】米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は7日、警察に拘束された黒人男性が死亡した事件を受けて人種差別に抗議するデモが全米に拡大する中、米軍による鎮圧を呼び掛ける共和党上院議員の寄稿を掲載したオピニオン面の編集長が辞任したことを明らかにした。寄稿掲載の判断をめぐっては激しい抗議が殺到し、社内でも批判が高まっていた。

 2016年5月からオピニオン面を担当してきたジェームズ・ベネット(James Bennet)編集長は、共和党のトム・コットン(Tom Cotton)上院議員による「軍を投入せよ」と題した寄稿の掲載を認めた判断について、紙面のイデオロギー的多様性を確保する取り組みの一例だと擁護し、激しい批判にさらされていた。

 コットン氏の寄稿は、「圧倒的な力を見せつけて法律に背く連中を排除し、拘束し、最終的には抑止する」ことを推奨する内容だった。

 これを受け、ニューヨーク・タイムズ社内では「寄稿掲載により社内の黒人スタッフが危険にさらされる」とツイッター(Twitter)で訴えるスタッフが相次いだほか、掲載に抗議する署名運動に約800人の従業員が参加。

 当初は寄稿掲載の判断を支持していた同紙発行人のアーサー・サルツバーガー(Arthur Sulzberger)氏も、寄稿の内容が同紙の基準を満たしていなかったとの見解を表明した。

 ベネット氏自身も、掲載前に寄稿を読んではいなかったことを認めた。

 サルツバーガー氏は7日、ベネット氏を「非凡な才能のある誠実なジャーナリスト」と評した上で、同氏の辞任を発表した。(c)AFP