【5月25日 AFP】ドイツ最高裁判所は25日、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)に対し、同社が有害物質の排出量が少なく見えるよう不正を行っていたディーゼル車について、買い戻しを命じる判断を下した。「ディーゼルゲート」と呼ばれるこの排ガス不正問題をめぐっては、何万件もの訴訟が起こされており、今回の判断は他の多くの裁判の行方にも影響するとみられる。

 カールスルーエ(Karlsruhe)にある連邦最高裁判所は、原告のヘルベルト・ギルバート(Herbert Gilbert)さんに対し、VWに車を返品して払い戻しを求めることができるが、車を使った期間分の代金として、当初の購入価格からの割引を受け入れる必要があるとの判断を示した。下級裁判所の判断を「事実上支持した」形だ。

 最高裁の裁判官らはVWに対し、原告の車の返品を受け入れ、約2万5600ユーロ(約300万円)の払い戻しを命じた。ただ減価償却を考慮し、元の購入金額からは6000ユーロ(約70万円)近く少なくなっている。

 VWがディーゼル車数百万台に関連する排ガス試験で不正を行ったことを認めてから5年近くが経過したが、VWが本国ドイツで実質敗訴となったのは今回が初めて。

 同社は「現在、原告との和解を進め、これらの訴訟を間もなく終了することを目指している」と発表し、被害を受けたディーゼル車所有者らへの「妥当な提案」を約束するとした。

 25日に審理が行われたのは、VWのディーゼルエンジン駆動式ミニバン「シャラン(Sharan)」を2014年に購入したギルバートさんの訴えのみについてだが、不正ソフトウエアが搭載されていたVW車は、世界で1100万台に上る。

 ドイツ国内では今もVW車の所有者約6万人が起こした裁判が続いており、原告の代理人は、「今回の判断は数百万人の消費者にとって有利な判例となり、たとえ大企業であっても法の適用を免れ得ないことが改めて示された」とコメントした。

 ただ今回の判断が他の類似の訴訟にも適用されれば、減価償却に伴う払い戻し額の減額により、VWが受ける経済的打撃は抑制されることになる。(c)AFP/Carsten HAUPTMEIER