【5月21日 東方新報】中国インターネット情報センター(CNNIC)などのリポートによると、中国の子どもの4割近くが小学校入学前にインターネットの利用を始めていることが分かった。「幼少期からネットを使うことは悪影響もある」と注意を呼びかける声は多いが、ネット使用の低年齢化は進む一方で、現代社会が抱える課題の一つとなっている。

 リポートでは2019年、全国の小中高校生ら約3万4000人にインターネットの使用状況について調査した。全体の93.1%がインターネットを使っていると回答。このうち小学生の39.2%が「入学前からインターネットを利用している」と答えた。中国社会科学院などの2017〜2018年の調査では、小学校入学前にネットを開始した割合は27.9%だった。調査の主体が違うので単純に数字を比較できないとしても、増加傾向は読み取れる。

 低年齢化の要因はさまざまに指摘されている。中国では一人っ子政策が長く続き、遊び相手になるきょうだいがいない子どもが大半。インターネットが「友だち」になりやすい。また、夫婦共働きが常識の中国では祖父母が孫の面倒を見ることが多く、「孫の機嫌を取るためスマホを渡すことがある。効果はてきめんだが、何度もせがまれるようになる」という話もよく聞く。そもそも両親がネットに夢中で、ネットに子育てを「委託」するような家庭もある。オンラインゲームに夢中になる子どもの多くは「パパもママも、いつもスマホをいじっていて、自分のことをかまってくれない」と答えている。このほか、「情報化時代を勝ち抜くため、早いうちからネットに慣れることも悪くない」と考える保護者もいる。3歳から微信(ウィーチャット、WeChat)を始め、小学校に入る7歳の頃には自分でネットショッピングができる子どもも珍しくない。

 中国では、スマホやタブレット端末に夢中になる人々を「低頭族(訳注:いつも下を向いてスマホを見ている人の呼称)」と呼び、その低年齢化が問題となっている。視力の低下や睡眠障害、体を鍛えず病気になりやすい、学習意欲の低下など、問題は枚挙にいとまがない。何より、不完全もしくは間違った情報を含む大量の情報を幼少期からシャワーのように浴びることで価値観や人生観にマイナスの影響を与えることや、人との交流が淡泊になって「リア充」を求めなくなり、社会の活力にも悪影響を及ぼすことが考えられる。

 冒頭のリポートでも「親や学校、社会全体で子どもに正しいネット習慣を根付かせる」「子どもが有害な情報に接しないよう注意する」と呼びかけている。ただ、欧米や日本でも子どもの「ネット中毒」が問題になっているのと同様、明快な解決策がないのが悩みの種となっている。(c)東方新報/AFPBB News