【5月20日 AFP】化石燃料に由来する世界の二酸化炭素(CO2)排出量が2020年には、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が原因で最大7%減少する見通しだとする研究報告が19日、発表された。だが、第2次世界大戦(World War II)以降で最も大幅となるこの劇的な減少によっても、長期的な地球温暖化はほとんど鈍化しないという。

 英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)に掲載された、今回のパンデミックがCO2排出量に与える影響について調査した初の査読論文によると、新型コロナウイルス感染拡大防止のロックダウン(都市封鎖)の結果として、4月上旬に世界全体のCO2排出量が前年の同時期に比べて17%減少したという。今回の研究を率いたのは、英イーストアングリア大学(University of East Anglia)ティンダル気候変動研究センター(Tyndall Centre for Climate Research)のコリーヌ・ルケレ(Corinne le Quere)教授だ。

 中国、米国、インドおよび欧州連合(EU)加盟国が、2020年の最初の4か月間における排出量減少分の3分の2を占めた。減少分はCO2で10億トン以上に相当する。

 実現可能性は低いが、もし世界経済が6月半ばまでにパンデミック以前の状態に戻れば、2020年のCO2排出量は4%の減少にとどまると予測されると、ルケレ教授の研究チームは推算している。

 だがロックダウンによる制限措置が今年いっぱい続くと、減少率は約7%となる見通しだ。

■気温上昇幅1.5度に合致

 2015年に採択された地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」の下では、気温上昇幅が2度を「十分に下回る」水準に地球温暖化を抑えることを200近くの国が約束した。

 だが、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」はその後、気温上昇幅を1.5度に抑える方がはるかにリスクが小さくなるとの判断を下した。

 科学者らの試算によると、1.5度の上限を守るには、大気から炭素を除去する別の手段が見つからない限り、排出量をこの10年間毎年7.6%減少させる必要がある。ロックダウンが今年いっぱい続くというシナリオは、この要件に合致する。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London)のマーク・マスリン(Mark Maslin)教授(気候学)は「今回のパンデミックは、輸送やエネルギーなどのシステムで大規模な構造改革が不可欠であることをわれわれに示している」と指摘した。(c)AFP/Marlowe HOOD