【5月17日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によるリモートワークの急増を受け、企業はオフィススペースを大幅に縮小し、コスト削減に乗り出すとみられるが、従業員の生産性は必ずしも向上するわけではない──。専門家の間でこう指摘する声が上がっている。

 米コンサルタント会社エデルマン(Edelman)で従業員体験(EX)を担当するシドニー・ローチ(Cydney Roach)氏は、「この革命には考え方の転換が伴う」と指摘。AFPに対し、「企業は10年間にわたり労働の将来について議論を続けてきたが、実際には、それに着手して十分に取り組むことにはあまり力を尽くしてこなかった」とし、「技術がこの種のリモートワークの支えになることをパンデミックが証明した」と述べた。

 米不動産サービス会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(Cushman & Wakefield)が公開した最近の調査結果によると、世界300企業のうち89%が、コロナ流行後もリモートワークが続くとみているという。

 英ウォリック大学(University of Warwick)のクレア・ライオネット(Clare Lyonette)教授とベアテ・バルダウフ(Beate Baldauf)上級研究員は先日、ブログで在宅勤務の利点を取り上げ、「多くの研究では、経費削減や生産性の向上、雇用や定着率を高め欠勤率を下げることなど、企業にとっての有益な成果が強調されている」と説明。

 一方で、リモートワークが長期的には悪影響を招く恐れがあることを雇用主は認識すべきだと述べ、「例えば、企業への満足度や忠誠心が下がることで生産性の低下につながる可能性があり、オフィススペースや資源の削減で節約できた分を消耗してしまうことにもなる」と警告した。

 だが複数の大手企業は、新型コロナウイルスによる経済的打撃を受けて、コスト削減のためにオフィスビルの数を減らしたいと思うだろう。

 仮想プライベートネットワーク(VPN)のプロバイダー「NordVPN」によると、米国の会社員らは在宅勤務により1日平均3時間の残業をしている。仕事と私生活のバランスに影響が出ている上、生産性は必ずしも向上していないという。(c)AFP/Jean-Baptiste OUBRIER