【5月17日 AFP】かつては外出するときに帽子を手にとっていたが、今、必要なのはマスクだ。

 以前はアジア人観光客が着用しているくらいで、人々の目には風変わりなものと映っていたマスクは突如、ソックスと同じくらい必要不可欠なアイテムになった。今やマスクは道徳的な市民のしるしであり、顔を覆っていなければ拒絶される公共スペースに入るためのパスポートの役割を果たしている。

 パリのオートクチュール業界で有名なフランス人デザイナー、ステファニー・クデール(Stephanie Coudert)氏はAFPの取材に「マスクの着用は、『私は脅威ではない』というしるしだ。市民的なジェスチャーだ」と語った。しかし、マスクのデザインに取り掛かる時には、ある考えが浮かんでやまないという。「それは口輪。口輪のイメージから離れることは難しい」

 一方、ファッション界で時代精神を体現するルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のデザイナー、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)氏はそんなためらいを感じることなく、黒地に自身のブランド「オフ-ホワイト(Off-White)」の矢印のロゴを入れたシンプルなマスクを早急に生産し、1枚92ドル(約9900円)で販売した。

 アブロー氏のマスクは瞬く間に完売。ファッション検索プラットフォームのリストインデックス(Lyst Index)によると、世界で最も人気のファッションアクセサリーになり、転売サイトで4〜5倍の値段がついているという。

 一方、クデール氏のクチュールマスクは1枚8ユーロ(約930円)だ。「私にとっては社会的な選択。私たちは皆、自分がどのように役立てるか自問していると思う」とクデール氏。当然マスクは人気で、同氏は現在、需要に追いつくために全力で作業している。