■エイズがもたらした変化と類似?

 人類学者のフレデリック・ケック(Frederic Keck)氏は、欧米諸国でマスクは長い間「古風で息苦しい」ものとみなされてきて、この先入観はなかなか振り払われないだろうという。

 実際フランスには、イスラム教徒のベールを対象として議論を巻き起こした「ブルカ禁止令」があり、厳密には顔を覆うことは違法とされている。

 ケック氏は仏紙ルモンド(Le Monde)への寄稿で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行とマスクがもたらしている社会的交流の制限を、1980年代にエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)が「求愛行為の無邪気さを失わせたこと」になぞらえた。

 歴史家のサイヤール氏は、マスクを着用しなければならないことにはマイナス面が多い中、プラスな面もあると指摘。「自己主張が全ての現代において、少しくらい顔を隠す行為は悪いことばかりではないだろう」 (c)AFP/Fiachra GIBBONS, Olga NEDBAEVA