【5月30日 AFP】フランスの香水の発祥地グラース(Grasse)ではバラが咲き誇っているが、今年の収穫はある問題を抱えている。

 園芸家のカロル・ビアンカラナ(Carole Biancalana)さんは、「マスクを着けて作業し、(バラの)香りを(直接)嗅げない」のは「かなりイライラします」と語った。

 ビアンカラナさんはクリスチャン・ディオール(Christian Dior)と提携する花農園ドメーヌ・ドゥ・マノン(Domaine de Manon)のオーナー。今年は新型コロナウイルス感染の危険性を考慮し、この季節に働く臨時の従業員にマスク着用を義務付けた。

 マスクをしていても、ビアンカラナさんはセンティフォリアの「複雑で多種多様な」香りを嗅ぎ分けることができる。センティフォリアは花瓶で自立することすらできないもろい品種で、ビアンカラナさんが確認するリストには、その香りを説明する形容詞が並ぶ。

「(センティフォリアの香りは)ハニー、スパイシー、フルーティー、ライチの間のどこかに分類されます。バラ自体が香水なのです」とビアンカラナさんは嘆息した。

「普段はお互いに助け合います。向かい合いながら列を進んでいくのです。会話をするのは楽しいです」。今年は、従業員はそれぞれ別の列を担当する。

 作業は午前9時から、日差しが強くなる午後1時前まで行われる。収穫時に最も重視すべきは、温度とバラの化学的特徴だ。

 若手従業員のバンサン・ロッシ(Vincent Rossi)さん(26)は、「私たちには『期限』があります。バラには特定の時間に作用するにおい分子があるのです」と説明した。

 ビアンカラナさんは、「素早く、手際よくかつ慎重に……まもなく開花するつぼみをつぶすことなく摘み取らなければなりません」と付け加えた。

 グラースは2018年、香水作りの長年にわたるノウハウで、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。(c)AFP/Claudine RENAUD