【4月24日 AFP】死別した愛する人をいつまでも身近に感じたい――こんな願いをかなえる画期的手法が、フランスで開発された。その人の匂いを瓶に詰めて香水にするのだ。

 発案者は保険営業員のカティア・アパラテギ(Katia Apalategui)さん(52)。7年前、大好きだった父親の死をなかなか受け入れられず、しのぶよすがを日々探し求めていた経験がきっかけだった。当時、アパラテギさんの母親は、亡くなった夫の残り香が染み付いた枕カバーを洗うことさえ嫌がっていた。それを見てアパラテギさんは、同じく愛する人を失った人々のために、故人の匂いを集めて保存する方法を考え付いた。

 科学者によると臭覚は、感情や記憶をつかさどる脳の部分と結び付いている。このため人は匂いを手掛かりに、特定の時間や場所、人物などを思い起こすことができる。

 アパラテギさんはアイデアを実現させるため協力してくれる研究機関や企業を数年間探し続け、ついに仏北西部ルアーブル(Le Havre)にあるルアーブル大学(University of Le Havre)を紹介された。

 同大のジェラルディン・サバリ(Geraldine Savary)氏は、開発した人間の匂いを再生する技術について、次のように説明する。「故人の衣服から匂いを抽出します。匂いは約100個の分子で構成されているので、4日間かけてそれを香水の形に作り変えるのです」

 この新しい香水についてアパラテギさんは、写真や映像などと同様に故人をしのぶ「なぐさめ」になると考えている。現在ビジネス・スクールに在学中のアパラテギさんの息子が、化学者の協力を得て今年9月までに新規事業として立ち上げる計画だ。香水の制作はオーダーメードで、価格は560ユーロ(約7万円)程度となる見込みという。

「匂いは、記憶という点に関しては最も強い感覚です。非常に強い思いの丈を(瓶につめて)お届けします」とアパラテギさんは語っている。(c)AFP