【5月14日 AFP】世界保健機関(WHO)の感染リスク管理部責任者シルビー・ブリアン(Sylvie Briand)氏がAFPの取材に応じ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)について、危機発生以前の事前対策が一部の国で講じられていなかったことに驚いたと話した。

 ブリアン氏に話を聞いた。

Q:パンデミックが急速に広がったことに驚いているか

A:われわれは2009年に新型インフルエンザ(豚インフルエンザH1N1)の流行を経験した。ウイルスが急速に拡散し、世界は9週間にわたって影響を受けた。現代の生活様式を考慮すると、急速に広がることは想定できた。

 われわれが驚いたのは、一部の国がパンデミックに対する事前対策をあまり講じていなかったことだ。

Q:今回の準備不足をどう考えるか

A:2009年までは準備がしっかりと整っていた。2003~2005年に鳥インフルエンザが流行したためで、2009年のパンデミック発生時の対策は十分だった。各国はマスクの備蓄があった。世界は準備していた。

 しかし2009年のパンデミックを経験し、人々は「それほどひどいものではなかった」と思うようになった。われわれはこれをパンデミック疲れと呼んでいる。各国は事前対策を更新しなかったし、危機的状況が過ぎたあとは、ストレスを感じるほどものではないと高をくくるようになったのだ。

 2009年のパンデミックがそれほど深刻な事態にならなかったのは、準備をしていたからだと考えている。死者は25万~40万人に上ったと推定されているが、準備していなかったらもっと悪い結果になっていた可能性がある。

Q:私たちがここから得られる教訓は何か

A:例えば、欧州、アジア、米国の状況を比較すると、アジア各国は他の地域に比べ事前に備えていたことが分かる。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行の傷痕が残っていたためだ。

 感染症の流行後には、深刻な経済危機が訪れる。このためSARSを経験したアジアの国々は対策を講じていた。

 また、韓国では2015年、中東呼吸器症候群(MERS)が流行した。流行が大規模ではなかったが、経済に大きな影響を及ぼした。ここで韓国は教訓を学び、準備していた。

 現在、準備不足でコロナウイルス危機に直面している国々にも同じような影響があると考えている。第2波はもちろん起こってほしくないが、もし発生したら、今よりも人々は準備できているだろう。(c)AFP/ Agnes PEDRERO