【5月18日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)に対する政策を決定づけるのが、科学的見地だけでいいのか──各国の社会と経済がどこまで耐えられるかが試されているロックダウン(都市封鎖)の緩和の動きが広がる中、各国政府はこの厄介な問題に直面している。

 国民の健康を守るための外出制限策は、経済と社会に大きな犠牲をもたらしている。

 米ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard Chan School of Public Health)で公衆衛生政策を専門とするサラ・N・ブライヒ(Sara N. Bleich)教授は、「新型コロナウイルス感染症を現在の悪夢ではなく、悪い思い出にしたければ、科学的助言がすべての政策決定において最優先されなければならない。それ以外はない」と強調する。

 だが、フランスの指導者らに助言を行う科学委員会のメンバーで、数理モデル専門家のシモン・ショシェメズ(Simon Chauchemez)氏は、考慮すべきは科学だけではないと指摘する。

 ショシェメズ氏はAFPに対し、「われわれ科学者も問題を解決しようと努めているが、最後に決定を下すのは政治家だ」と述べた。

 外出や集会、経済活動の再開を認める新たな規則を定めるにあたり、各国指導者は利害の対立と困難な選択に直面している。

 英国ではパンデミックに対する対応が遅かったとして、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)政権が激しい批判を受けている。

 一方、パンデミック対応を広く評価されているドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は、科学者らの見解に細心の注意を払っていた。しかし、厳しい外出制限を強硬に推し進めたとの批判もある。

 ドイツ連邦議会のウォルフガング・ショイブレ(Wolfgang Schauble)議長は、独日刊紙ターゲスシュピーゲル(Tagesspiegel)に、「人の命を守るためには、他のすべてのことは二の次にすべきだと聞いた時、そのような絶対主義は不当だと思った」と語っている。