【5月11日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗ウイルス薬治療法をめぐり、世界の科学者らは一見独特な手法を取り入れて、先を争い開発に挑んでいる。

【関連記事】ロックダウン一部解除、感染「第2波」に注目 時期や規模は?

 ベルギーの一流科学者らは、アンデス山脈に生息し荷役用の動物として知られるラマの体内で作られた抗体の分離に着手。この取り組みは確かな先例に基づくものだと強調する。

 ベルギー・ヘント(Ghent)にあるフランドル生物工学研究所(VIB)のグザビエ・サエレン(Xavier Saelens)教授は、ラマはこれまでにもわれわれを救っているとしてAFPに成功への抱負を語った。同氏によると、ラマの抗体由来の薬剤はすでに市場に出回っており、血液疾患の一つ、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の治療薬「カプラシズマブ」を例に挙げた。

 研究では、雌のラマ「ウインター」に新型コロナウイルスの表面に存在するタンパク質を注射し、体内に抗体を作らせた。この抗体は、担体を遮断しウイルスの脅威を無効にする役割を果たす可能性があるとみられている。VIB研究員のドリアン・デフリーヘル(Dorien De Vlieger)氏は、「これらの抗体を患者に直接投与する抗ウイルス治療法を生み出すことがわれわれの目標だ」と話す。ヒトでの初の臨床試験は「今年末までに」始まる見通しだという。

 サエレン氏とベルギー人の共同研究者ニコ・カルワルト(Nico Callewaert)氏は、米テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)のジェイソン・マクレラン(Jason McLellan)教授率いるチームと協力して研究を行っている。VIBはこの分野で世界的に知られ、ヘント大学傘下の学術機関として、製薬業界から独立して運営されている。

 ウイルスとの闘いの救世主になるかもしれないウインターは現在、ベルギー国内のとある場所で飼育されている。デフリーヘル氏は、「動物愛護団体を懸念」し、「彼女のストレス水準を低く抑えるよう、われわれは最善を尽くすこともしなければならない」と語った。(c)AFP