【5月9日 AFP】米南部のジョージア州当局は8日、非武装でジョギングしていた黒人男性が2月に殺害された事件の容疑者として白人の父子2人を逮捕・訴追し、「十分過ぎるほどの相当の根拠」があると述べた。しかし、容疑者らの逮捕に事件発生から74日かかった理由については説明しなかった。

 逮捕されたのは、グレゴリー・マクマイケル(Gregory McMichael)容疑者(64)と息子のトラビス(Travis McMichael)容疑者(34)。両容疑者は、2月23日に死亡したアマード・アーベリー(Ahmaud Arbery)さん(25)に対する殺人と加重暴行の罪で訴追された。

 事件が起きたのはジョージア州の沿岸都市ブランズウィック(Brunswick)。アーベリーさんが白昼に路上で銃で撃たれる様子を捉えた動画が先日公開され、ネット上で拡散された。容疑者2人は、動画が公開された2日後に逮捕された。 

 映像には、住宅街を走っているアーベリーさんが、右車線に停止している白いピックアップトラックに近づいて行くと、トラックの荷台に1人の男が立っている様子が映っている。アーベリーさんがトラックを避けようとすると、ショットガンを持った別の男がアーベリーさんの行く手を阻む。その男とアーベリーさんの間でもみ合いが起き、その後、銃声が3発聞こえる。

 全米の注目を集めたこの映像を撮影した男性も、捜査の参考人とされている。

 警察の調書によると、グレゴリー・マクマイケル容疑者は、アーベリーさんが近所で発生した強盗事件から逃げる途中の犯人だと思ったと主張。息子と一緒に銃を持って追跡しようとしたが、アーベリーさんと向き合った結果、最悪の事態になったと話していた。

 アーベリーさんの家族は、アーベリーさんはジョギングをしていただけで、憎悪犯罪の被害者だと述べている。

 事件の映像は全米に衝撃を与え、バスケットボール界のスター、レブロン・ジェームズ(LeBron James)さんや女優のゾーイ・クラヴィッツ(Zoe Kravitz)さんら多くの著名人が行動を呼び掛けた。

 非武装のアフリカ系米国人が殺害される事件は相次いでおり、活動家らは今回の事件について、米国に深く根付いた人種差別を浮き彫りにしていると主張している。

 ブランズウィックの裁判所前では、新型コロナウイルスの感染防止のためマスクを着用した大勢の人々が、アーベリーさんのための正義を求めて集まり、デモを行った。(c)AFP/Charlotte PLANTIVE