■パンデミックから戦争や紛争、飢餓に

 パリ第8大学(Paris VIII university)のイブ・シトン(Yves Citton)教授も、世界が「無数の弱性がもたらす症候」に見舞われていると警告する。

 AFPの取材に答えたシトン氏は「それは世界の終わりではないが、すでに動き始めている『何か』についての警告」「多くが崩壊することについての警告だ」と述べる

 他方で「炭素から解放された経済」を目指す仏シンクタンク、シフト・プロジェクト(Shift Project)を率いるジャンマルク・ヤンコビッチ(Jean-Marc Jancovici)氏も、崩壊はゆっくり進むかもしれないが、「(ウイルスにより)小さな一歩は踏み出された。もう後戻りはできない」との考えを示している。

 もっと恐ろしい見方をする人もいる。

 書籍「How Everything Can Collapse」の共著者で、環境保護活動家および農業技術者のパブロ・セルビーニュ(Pablo Servigne)氏は、「歴史の…そしてヨハネの黙示録に記される四騎士の大いなる教訓は、疫病、戦争、飢餓がそれぞれの結果として、連続して起きる傾向にあるということだ」と指摘する。

「今はパンデミック(世界的な大流行)が起きている。それはさらに次の事象──戦争や紛争、飢餓につながりかねない」

「そして飢餓は、別のパンデミックに対してわれわれをいっそう脆弱(ぜいじゃく)にする」

■選択肢を考えるチャンス

 見通しは恐ろしいかもしれないが、現在の危機は私たちに新自由主義的な資本主義に代わる別の選択肢を考えるチャンスを与えている。そう語るのは、著名な哲学者で社会学者のブリュノ・ラトゥール(Bruno Latour)氏だ。

 ラトゥール氏は自身のブログで、「コロナ危機の後、以前と同じところからスタートさせないよう」世界は気を付けなければならないと主張する。

「多くのものが強制的に中断させられたが、これを機に、やめた方がいいものとさらに発展させるものとを吟味すべき」

 同氏はフランスのオンラインサイトAOC(Analysis Opinion Critique)への寄稿で、「今まで誰もが減速したり調整したりが不可能だと考えていた世界経済システムだが、数週間でそれを一時停止することが可能であることをこのウイルスが明らかにした」と書いた。

 セルビーニュ氏も同様に明るい面を見ている。ロックダウン(都市封鎖)を「列車内で誰かが非常警報ボタンを押すこと」になぞらえ、諸国家が現在、長い間タブーとされていたやり方で社会経済政策に介入していることに触れた。

 さらに同氏は、人類の狂気が止まるや否や自然がすぐさま反応したこと、われわれがいなくなった場所に自然が戻ったことに勇気づけられたとも述べている。(c)AFP/Stéphane ORJOLLET