【5月8日 AFP】米議員団は7日、新型コロナウイルスの流行について警鐘を鳴らし、警察から訓戒処分を受けた中国・武漢(Wuhan)の李文亮(Li Wenliang)医師の名を、在米中国大使館前の通りに付ける法案を上下両院に提出した。中国政府の猛反発は必至だ。

 この法案は、これまで「インターナショナル・プレース(International Place)」という当たり障りのない名前で呼ばれていた米首都ワシントンの中国大使館前の通りを、「李文亮プラザ」に改称するもの。

 李医師は昨年12月、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスに似たウイルスが武漢市内で広がっているとソーシャルメディアに投稿した医師の一人。このため警察から訓戒処分を受け、今後は「違法行為」をしないとする合意書への署名を強制された。

 今年2月に李医師が新型コロナウイルスで死亡すると、国民からは悲しみと政府の危機対応への怒り、言論の自由に対する強い要求が湧き起こり、警察は李医師の処遇について異例の謝罪をした。

 対中タカ派として知られるトム・コットン(Tom Cotton)上院議員(共和党)は、「李文亮医師の死の責任を負う国の大使館前にその名を永遠に刻むことで、李医師の名が決して忘れられることのないようにしたい」と述べた。マルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員もこの法案を支持している。

 米国では2014年にも、民主化運動を率いて投獄されたノーベル平和賞(Nobel Prize)受賞作家の劉暁波(Liu Xiaobo)氏にちなんで通りを改称する法案が提出された。

 しかし、中国の反発を受けて、当時のバラク・オバマ(Barack Obama)政権が中国政府との協力を考慮し、拒否権の行使をほのめかしたため、この法案は下院で廃案となった。

 一部の中国人らはこの後、在中米国大使館前の通りを、米政府による大規模な情報収集活動を暴露し、亡命生活を送る米国家安全保障局(NSA)元職員のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)容疑者にちなんで改称しようと提案した。(c)AFP