【5月7日 AFP】はがれたコンクリートブロックから突き出している鉄筋。がれきは静かな灰色の海のように一面に広がっている──シリア北西部イドリブ県アリハ(Ariha)の光景は、まるで巨大地震の後のようだ。ある家族は廃虚と化した自宅で、イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」中の日没後の食事「イフタール(Iftar)」をとっていた。

 3人の子どもを持つタレク・アブ・ジヤド(Tareq Abu Ziad)さん(29)は「今、私と家族は廃虚の真上にいる」と語った。「私たちはとても困難でつらい記憶を思い出してしまう。神が、他の誰にも同じ経験をさせないよう祈っている」

 シリア反体制派の最後の拠点となっているイドリブ県に対し、昨年末、ロシア政府の空爆支援を受けたシリア政府軍が攻撃を開始した。アブ・ジヤドさん一家はこれを逃れて、アリハを離れた。

 アリハ市街の大部分は破壊され、住民は全員、北へと避難した。しかし停戦状態が維持されたため、貧困層の一部は廃虚に戻って安い宿泊施設を探すことを選んだ。

 アブ・ジヤドさんは先月アリハに戻り、滞在できる場所を見つけた。しかし、イフタールはどうしても自宅のあった場所でとりたいと思っていたという。「私たちは毎年ここでラマダンを過ごした。だから今年もラマダンのうち1日はここで過ごしたかった」

 家の台所はなくなってしまったが、アブ・ジヤドさんの母親は、よそで食事を用意して運んできたと語った。「一番大切なことは、昔を思い出しながら家で食事をすることです」 (c)AFP/Aaref Watad