封鎖下の日々をつづった「武漢日記」、海外出版で中国人作家に国内から批判
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【5月4日 AFP】中国の著名な作家・方方(Fang Fang)氏(64)は、自らが暮らす武漢(Wuhan)市が世界から隔絶されると、故郷で繰り広げられる新型コロナウイルス流行の悲劇についてオンラインで日記を書き始めた。
2010年に中国で最も権威ある文学賞を受賞した方方氏の「武漢日記(Wuhan Diary)」は、数千万人の読者を引きつけた。しかし数か国語に翻訳され、海外出版されようという段階になった今、中国国内で国家主義的な反発に直面している。中国政府の新型コロナウイルス対策を非難している国々に格好の材料を与えたと非難されているのだ。
人口1100万人の工業都市・武漢で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が初めて確認されたのは昨年12月、前代未聞のロックダウン(都市封鎖)が開始されたのは1月23日だった。方方氏はロックダウンの2日後から、武漢での暮らしを記録し始めた。
当局が中国全土への流行拡大を阻止しようと奔走する中、隔絶された武漢住民の不安や怒りを方方氏は記した。住民たちの助け合いや、部屋に日の光が差し込んだ時に感じる小さな喜びといった希望についても書いた。同時に、超満員の病院で患者が追い返されたといった政治的に微妙とされる話や、マスク不足や親戚の死についても触れた。
ある日の記録にはこう書かれている。「友人の医師から『人から人への感染があることは、実はわれわれ医者の間ではしばらく前から分かっていた。われわれは上司たちにそれを報告したが、誰も人々に警告しなかった』と聞いた」
政府から独立したメディアがない共産党独裁国家の中国で、検閲されていない武漢からの報告を読もうと、方方氏のオンライン日記に多くの人が殺到した。
しかし、SNSで著者に敵意を向ける人もいた。特に、米国が流行初期の中国の対応が透明性を欠いたために、世界は貴重な時間を無駄にさせられたと非難し、米中間で新たな外交論争が持ち上がると、方方氏への非難も増えた。