封鎖下の日々をつづった「武漢日記」、海外出版で中国人作家に国内から批判
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■炎上をあおった海外版の宣伝
中国版ツイッター(Twitter)「微博(ウェイボー、Weibo)」のあるユーザーは、方方氏にこう非難をぶつけた。「上出来だよ、方方。お前は欧米に、中国を攻撃するための弾を与えているんだ」「裏切り者の本性を現したな」
「日記を一体、いくらで売ったんだ?」と、4000人近くが亡くなった武漢の悲劇で金もうけをしていると批判する投稿もあった。
ネット上で集中攻撃を受けた方方氏は微博で、自分は国家主義者の非主流派による「ネットいじめ」の被害者だと訴えた。また中国経済誌・財新(Caixin)電子版のインタビューでは、殺害の脅迫を受け、自宅の住所をネット上でさらされたことを明かしている。
6月に翻訳版の出版を予定している米出版社ハーパーコリンズ(HarperCollins)の宣伝の仕方が、オンラインでの怒りをあおった。同社はウェブサイトで、「破壊的な状況における過酷な現実が方方氏に、感染症流行への対応を阻んだ社会的不公正、腐敗、職権乱用、政治制度問題に対して声を上げさせた」とうたっていたのだった。
さらに同社はこの書籍は、「不気味さとディストピア」が混じり合っており、「独裁国家における監禁生活に対する独特の視点」を提供していると続けている。
中国の政府系大衆紙、環球時報(Global Times)の胡錫進(Hu Xijin)編集長は、中国政府が米政府との対立で苦しい立場にある中で、海外版を出版するのは「趣味が良いとはいえない」と述べている。
「結局は、最初に方方氏を支持した人々も含めて中国人が、欧米で同氏が得る名声のつけを払うのだ」という胡氏のSNS投稿には、19万以上の「いいね!」が付いた。
また環球時報のある記事は、多くの中国人にとって「武漢日記」は「偏ったものであり、武漢の負の側面しか見せていない」とも批判している。
財新とのインタビューで方方氏は、こうした論争のせいで「武漢日記」に関心を持っていた中国国内の出版社が今は尻込みしていると語っている。方方氏は「私の日記をきちんと読んでもらえれば、感染症の流行に対し中国政府が効果的な措置を講じたことが分かるはずだ」と訴えた。
方方氏は「武漢日記」で受け取る「印税の全て」を、「闘いの最前線で働き亡くなった医療従事者の遺族に寄付する」と宣言している。(c)AFP/Ludovic EHRET