【4月21日 AFP】ユーラシア大陸の氷床が約1万4000年前に融解したことで、地球全体の海面水位が約8メートル上昇したことが、20日に発表された研究結果で明らかになった。今日の急速な氷河融解のリスクを浮き彫りにする研究だ。

 約3万3000年前に始まった最終氷期極大期(Last Glacial Maximum)には、北半球の大半を広大な氷床が覆っていた。

 当時、北欧スカンディナビア(Scandinavia)地域の大半を覆っていたユーラシア大陸の氷床には、現在のグリーンランド(Greenland)氷床に存在する約3倍の量の凍結水が含まれていた。

 しかし、英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」に掲載された論文によると、急速かつ局地的な温暖化により、ユーラシア大陸の氷床はわずか500年間で崩壊したという。

 研究チームはノルウェー海を掘削して採取した堆積物コアを分析。するとユーラシア大陸の氷床の崩壊は、「融氷パルス1A(Meltwater Pulse 1A)」と呼ばれる急激な海水面上昇の一因になっていたことが分かった。この事象により、地球全体の海水面は1万4700年前から1万3500年前の間に25メートルも上昇した。

 論文の主著者でノルウェー・ベルゲン大学(University of Bergen)に所属するジョー・ブレンドリエン(Jo Brendryen)氏によると、ユーラシアの氷床の融解は、広範な局地的温度の変動と同時期に発生した。

 ブレンドリエン氏はAFPに対し、「グリーンランド氷床から掘削した氷床コアの研究は、グリーンランド上空の大気が当時数十年間で最大14度上昇したことを示している」と説明し、「この温暖化が氷床崩壊の主因だったと考えている」と述べた。

 温暖化は地球全体で進行しているが、北極や南極のような一部の地域では他地域と比べて温暖化のペースがはるかに速い。

 地球温暖化の要因である二酸化炭素(CO2)の大気中濃度は現在415ppmを超えているが、当時は約240ppmだった。

 全世界で6メートル超の海面上昇を可能とするほどの凍結水を含んでいるグリーンランド氷床は現在、記録的な速度で融解しており、2019年だけでも5600億トン超の氷塊が失われた。

 グリーンランドと南極の一部は現在、1990年時点の6倍の速さで融解が進んでいる。今回の研究は、ユーラシア大陸の氷床が今後数世紀で完全に解け、その間に毎年4センチ超、計4.5~7.9メートルの海面上昇が起きるとしている。

 CO2排出量が削減されて温暖化の速度が遅くなったとしても、グリーンランドと西南極(West Antarctica)の氷床が解け続けることを多くの研究者が懸念している。(c)AFP/Patrick GALEY