【4月16日 AFP】新型コロナウイルスに感染した人は、目立った症状が表れる数日前からウイルスを拡散させ始めている可能性があるとする最新のモデル化研究が15日、発表された。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を食い止めるため、世界では、感染者の接触歴を症状が表れ始めた時点までさかのぼって追跡調査するといった対策が講じられているが、今回の研究では、こうした対策の根拠となっている重要な前提に異を唱える結果が示された。

 自身が感染していることに気付いてすらいない一部の人々がウイルスを他人に感染させていることについては、これまでも専門家らの間でその可能性について指摘されていた。

 だが今回の研究では、感染者からの伝染リスクが、実際には症状が発現する前からすでに非常に高くなっていることが示唆されている。

 医学誌ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)に掲載された論文は、「流行を効果的に制御するには、症状発現の2~3日前に発生している可能性がある感染を捕捉する目的で、接触者追跡のより包括的な基準の制定を至急検討するべきだ」としている。

■症状発現前に高い感染性

 今回の研究では、感染可能期間(感染者が他者に感染させることが可能な期間)に関する推論値を導き出すために、中国の病院で確認された患者からのウイルス排出に関する臨床データと、感染者とその人から感染したとみられる他者の組み合わせの「感染ペア」に関する別のデータを比較した。

 香港大学(HKU)のエリック・ラウ(Eric Lau)氏らが主導した研究チームは、広州市第8人民医院(Guangzhou Eighth People's Hospital)の入院患者94人の咽頭検体を採取し、最初に症状が表れる日から32日間にわたってそれぞれの感染力を評価した。

 その結果、患者はいずれも重症や重篤に分類される症例ではなかったが、保有するウイルス量は症状が表れる直後が最大で、その後に徐々に減少することが明らかになった。

 また、中国国内と世界各地の感染ペア77組に関する公開データを用いて、ペアのそれぞれの患者に症状が表れるまでの時間の経過を算定した結果、潜伏期間(感染への暴露から症状が表れるまでの時間)は5日強と仮定された。

 分析の結果、感染力が高い状態は症状が表れる2.3日前に始まり、最初の疾病兆候の0.7日前にピークに達すると推察された。ただし、症状が表れた正確なタイミングの特定は患者の記憶を頼りにしたと、論文の執筆者らは注意を促している。

 感染連鎖における二次感染者の44%は症状が出る前の期間に感染したと、論文の執筆者らは推測している。また感染力は7日以内に速やかに低下すると予測されている。(c)AFP/Kelly MACNAMARA