【4月15日 AFP】医師や看護師、その他の医療従事者は、この新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の中で意図せず英雄となり、世界各地のバルコニーや通りからは彼らに感謝の拍手が送られている。

 病院職員らは大量に押し寄せる患者の対応に追われる一方、医療物資不足にも直面し、さらに自身も新型ウイルスに感染するという恐怖とも向かい合っている。患者の治療に当たる中で、胸が張り裂けるような決断を迫られる状況も数多くある。

 AFPの記者たちはこのパンデミックの最前線の真相を知るため、世界各地の医療従事者から話を聞いた。

■着替えに40~50分、手洗いと消毒に60~75分

 世界で最も多くの犠牲者が出ている国の一つであるイタリアでは、多数の医師や看護師が新型ウイルスに感染して亡くなっており、医療従事者からも多くの感染者が出ている。

 首都ローマにあるトル・べルガータ病院(Tor Vergata Hospital)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)集中治療ユニットで看護コーディネーターを務めるシルバーナ・デ・フロリオ(Silvana de Florio)氏は、感染を避けるためにマスクとフェースシールド、手袋、スクラブ(医療用衣服)を適切に着用する重要性を強調した。

 それらを着用するのに「特定の時間は設けていないが、7時間勤務の場合、着替えるだけでだいたい40~50分必要だと見積もっている」とフロリオ氏は述べ、「手洗いと手指の消毒に関しては、1日約60~75分かけている」と明かした。

■「熱がなければ復帰できる」と言われ…

 米ニューヨークで看護師として働くベニー・マシュー(Benny Mathew)さん(43)は、適切な医療用衣服を着用しないで少なくとも4人の患者の治療に当たり、新型ウイルスに感染したと述べた。

 その後間もなくして熱が下がると、勤務先の病院はマシューさんに仕事に戻るよう求めたという。

 マシューさんは「熱がなければ仕事に復帰できると言われた。熱がないことが病院側の唯一の基準だった」と述べ、「マスクを着用して仕事に戻るよう言われた。スタッフが足りていないため、現場に戻ることが私の義務だと思った」「ただ同僚や、まだ感染していない患者に病気をうつしてしまうんじゃないかと心配だった」と語った。

■「悪夢の中を生きている」

 感染症を専門とするフィリピン首都マニラのサン・ラザロ病院(San Lazaro Hospital)の医師たちは、人類にとって最も厄介な接触感染との闘いには慣れていたが、COVID-19のようなものを目の当たりにしたことはなかったという。

 自身も感染リスクの高い世代に当たるフェルディナンド・デグズマン(Ferdinand de Guzman)医師(60)は、「悪夢の中を生きているようだ」と話す。

 集中治療室と人工呼吸器の数に限りがあるため、医師たちは恐ろしい判断を迫られている。

 デグズマン医師は「われわれは神を演じたくはない」「ただ、臨床医は判断を下さなければならない」と語った。

 また、多くの医療従事者が帰宅を恐れている。デグズマン医師は「みんな家族を心配している」と語った。(c)AFP/Gildas Le Roux with Joshua Melvin in Manila, Daniel Bosque in Barcelona, Femke Colborne in Berlin and Camille Malplat in Libreville