【4月14日 AFP】4年にわたり世界中を旅し続けて来た夫婦が、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、米フロリダ州で足止めされている。夫婦はこれまで、5大陸50か国を訪れている。

 夫婦は現在、マイアミ北部のショッピングセンターの駐車場に車を止め、2週間を過ごしている。観光ビザの期限は刻一刻と迫っている。

「僕たちには夢があった」と話すのは、イタリア出身のアルド・ジャクウィント(Aldo Giaquinto)さん(38)。「僕たちの夢は、車で世界中をドライブすることだった」

 しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりで、各国が移動制限を課し始めた。それはまるで、世界中のドアというドアがバタンと閉まっていくようだった。

 アルドさんの妻のベラ・コズロフスカイア(Vera Kozlovskaia)さん(35)は、モルドバ出身。2人は2016年に仕事をやめ、愛車「トト」で長旅を始めた。「トト」は、トヨタ自動車(Toyota Motor)のランドクルーザープラド(Land Cruiser Prado)だ。

 夫婦は英国で暮らしていた。ベラさんは情報技術の仕事をし、アルドさんはフィッシュアンドチップス店を経営していた。

 しかし、ビザの期限が14日に迫っており、夫婦の不安は高まるばかりだ。ビザの延長を申請しているものの、今のところ何も返答がないという。

■「優しい人がたくさんいることに驚いている」

 夫婦は普段、ビーチにあるトイレのような公共設備を利用している。しかし、ベラさんによると、「今はすべてが閉鎖されている」という。幸い、小売り大手ウォルマート(Walmart)は開いている。

 旅行の頓挫にもかかわらず、夫婦は明るい。食べ物を提供してくれたり、話しかけに来てくれたりする地元の人々の支援を有り難く思っている。

「助けの手を差しのべようとしてくれる人の数に圧倒されています」とベラさんは言う。「優しい人が周りにたくさんいることに驚いています」

 夫婦は旅行後、イタリアに定住する予定だった。新築のアパートでの生活を心待ちにしていたという。

 しかし現在、すべてが停止している。夫婦はビザの延長が認められ、新型ウイルスによる危機が去るまで、フロリダでじっと待つことを望んでいるという。

「僕たちは待ちます」とアルドさん。「みんながやっているように」 (c)AFP/Leila MACOR