■次男

 バイデン氏の悲しみの深さは誰が見ても明らかだが、家族の悲劇はこれまで繰り返し語られてきたため、同氏の政治ブランドの一部にもなっている。

 だが、次男のハンター氏については別だ。

 弁護士でロビー活動家のハンター氏のキャリアは波乱に満ち、ウクライナのガス企業の取締役として多額の報酬を得ていた。だが、同社はバイデン氏が副大統領だった時期に汚職疑惑が浮上した。

 またハンター氏は自らのアルコールおよび薬物依存を認めているが、刑罰の対象となったことはない。

 だがトランプ氏は米大統領選の投票日まであらゆる機会を捉えて、ハンター氏の問題を武器とするに違いない。

 人間的な温かさと庶民的な振る舞いで「アンクル・ジョー(ジョーおじさん)」とも親しまれるバイデン氏だが、公の場で失態を演じがちでもある。

 数十年の長期にわたるバイデン氏のキャリアの中から過失や失態、とりわけ今となっては非常に評判の悪いイラク戦争支持などを強調することは、トランプ氏にとっては容易だろう。

 だがこの長さがまたバイデン氏を有利にもしている。隠された秘密などほぼ残っていないという点だ。そして今のような混迷の時には、バイデン氏がアピールする経験の豊かさは魅力となるかもしれない。(c)AFP/Sebastian Smith