【4月2日 AFP】現在進行中の新型コロナウイルス危機に当局が適切に対応できなければ、世界的な食料不足が発生する恐れがあると、国連(UN)専門機関の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)、関連機関の世界貿易機関(WTO)の3機関のトップが1日、警告した。

 世界の多くの政府がウイルス拡散を遅らせるためロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったが、これにより国際貿易と食料品のサプライチェーンに深刻な影響が出ている。

 多くの国で、ロックダウンの対象となった都市の住民がパニック買いに走り、スーパーマーケットの陳列棚が空になった。これは食料品のサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)さを示している。

 FAOの屈冬玉(Qu Dongyu)事務局長、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長、WTOのロベルト・アゼベド(Roberto Azevedo)事務局長は連名で共同声明を出し、「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」と述べた。

 これは根拠のない脅しではない。2007年の世界金融危機後には、コメの生産国であるインドとベトナムがコメの国内価格の上昇を避けようと輸出を規制した結果、コメの国際価格が急騰して一部の発展途上国で暴動が起きた。

 ロシアは、小麦の国内価格の上昇を防ぐためすでに備蓄の放出に踏み切り、輸出規制も検討している。3機関の警告はロシアを念頭に置いている可能性がある。

■労働者を集められない! 農業混乱の恐れ

 より長期的には、封鎖命令と人の移動制限によって農業労働者の確保や食料品の市場への出荷が不可能になり、農業生産が混乱するリスクがある。

 速やかに打開策を見いださない限り、米国ではメキシコからの季節的農業労働者の不足で多くの作物の生産がリスクにさらされる。西欧でも北アフリカと東欧からの労働者の不在により、同様の結果を招きかねない。

 FAOのシニアエコノミスト、アブドルレザ・アッバシアン(Abdolreza Abbassian)氏は、AFPの電話インタビューで、「この危機は始まったばかりだ」と話し、生産よりもむしろ輸送やロジスティクスの問題だと述べ、人口と輸出国としての役割の大きさから、先月25日から全土で3週間のロックダウンに入ったインドの状況が鍵を握るとの見方を示した。

 FAO、WHO、WTOの事務局長らは、食料品のサプライチェーンに直接関わる人とそれ以外の人両方の健康を守り、食料品のサプライチェーンを維持する上で、食料の生産・加工・流通に携わる労働者を保護する必要があると強調した。

 イタリアとフランスでは、スーパーマーケットのレジ係が新型コロナウイルスに感染した例もあり、一部の労働者は感染予防措置や防護具が不十分だとして職場を放棄。米国でも、高級スーパーのホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)で職場放棄が起きた。

 FAO、WHO、WTOは、新型コロナウイルス対応策が引き起こす食料品不足を避けるには協力することが必要だと訴えた。(c)AFP/Isabel MALSANG