【3月24日 AFP】国際オリンピック委員会(IOC)でマーケティング部門の責任者を務めていたマイケル・ペイン(Michael Payne)氏は23日、東京五輪に向けたプロセスを再編するのは「気が遠くなるほど複雑」な作業であるとして、IOCとトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長が問題の結論を先延ばしにしていることを批判すべきでないとの見解を示した。

 約20年間にわたりIOCに勤め、スポンサー支援を通じて五輪のブランドや財政に変革をもたらした功労者として知られるペイン氏は、AFPの電話インタビューに対して、IOCは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を理由に一方的に大会を中止する権利があると明かした。

 しかしながら、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に反発した西側諸国が1980年のモスクワ五輪をボイコットしたことにより、当時選手だったバッハ会長は同大会に出場できなかった経験があることから、東京五輪を中止する選択肢はないとペイン氏は確信している。

 ペイン氏はIOCが大会延期に向けて動いている背景について、「世界最大のスポーツ大会に向けて7年間準備をしてきた後、突然変更するのは気が遠くなるほど複雑な作業を伴う」と説明すると、「IOCはプランBへの後退を模索する緊急事態に直面している。合法で一方的に大会を中止する権限を持っている」と続けた。

「東京五輪の延期で日本が損失を被れば、大会を自身の一大プロジェクトとして掲げている安倍晋三(Shinzo Abe)首相は面目と政治的資本を失うことになる」「ここ数日間、日本は予定通りの開催に向けて大いに突き進んできたが、問題は他の国にとってそれはできないということだ」

 ペイン氏はまた、日本が延期を検討することに不本意な姿勢を示していたことが、バッハ会長の「片腕を後ろで縛りつけていた」とコメント。さらに、「日本のメッセージは、延期は年内が望ましいとの期待も込められていたかもしれないが、果たしてこれが不透明な状況を解決するものになるだろうか?」と疑問を呈した。

「最も避けたいのは、『実現するのか?』というような暗雲が大会に垂れ込めてしまうことだ」「多くの国が2021年に延期するのが望ましいと声を上げていることが、日本に手を縛られているIOCの後押しとなり、『10月では不可能』と言える手助けになる」

 ペイン氏は、この深刻な状況からすれば2021年の開催を検討することは安倍首相にとってかなりの慰めになるとの考えを示し、「2021年への延期は、安倍首相にとって苦渋の決断になるのと同時に、私は日本が史上最高の五輪を開催できると確信している」と語った。

「来年、日本はこの状況を乗り越えたと宣言して大会を祝うことができるだろう。そうなれば、安倍首相にとってかなり大きい」「2021年の夏が最良の選択であり、実際に唯一の選択肢だ」 (c)AFP/Pirate IRWIN