【3月22日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、世界のスポーツカレンダーがほぼ白紙になる中で、国際オリンピック委員会(IOC)は東京五輪を4か月後に開催すると強調しているが、延期を求める声は高まっている。

 サッカーの欧州選手権(UEFA Euro 2020)は1年延期になり、米国陸上競技連盟(USATF)や米国水泳連盟(USA Swimming)、フランス水泳連盟(FFN)などの有力な国際競技団体は東京五輪の延期を要求している。

 ではなぜ、IOCは予定通り実施の姿勢を維持しているのだろうか。

■まだ4か月ある

 IOCのトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長は、7月24日の開会式までまだ時間はあるから、パンデミックに対処することはできると話し、他の五輪関係者も同意見だと示唆している。

 バッハ会長は米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)で「われわれとしては、(延期は)現時点の務めではない。タスクフォースの意見が上がってきているわけでもないこの段階では、臆測を始めたり、決断を下したりするにはまだ早い」と話している。

 国際ボート連盟(FISA)のジャン・クリストフ・ローラン(Jean-Christophe Rolland)会長も、「7月24日まではまだ長い。われわれが直面しているのは未曽有の危機で、今後の展開について確かなことが言える人はいないのだから、いくつものシナリオが考えられる」とバッハ会長の立場にある程度の理解を示した。

■過去の中止の原因は世界大戦だけ

 1987年のブラックマンデーや1991年の湾岸戦争(Gulf War)の後も、1988年ソウル五輪と1992年バルセロナ五輪は実施された。1916年、1940年、1944年の大会が中止になった原因は世界大戦だった。

 仏パリに拠点を置くスポーツマーケティング企業の社長は、「象徴的価値という点で、五輪の中止や延期は影響が大きい」「(延期や中止を決めれば)未踏の領域に入る。つまり五輪はもはや、世界大戦以外に対しても揺るぎない存在ではなくなるということだ」と話している。

■最終的な判断をするのは日本、しかし状況は複雑

 中止や延期の正式な決定権はIOCにあるが、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games)と話し合い、世界保健機関(WHO)の助言を受けた上で、実質的な最終判断を下すのは日本政府になるとみられる。

 ある研究者は「さまざまなステークホルダーの複雑な関係を考慮しながら判断しなくてはならない」「大会の組織委員会や、日本政府、国際競技団体、マーケティング会社、メディアなどがそうだ」と話している。