【3月19日 AFP】英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)は今週、新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)への介入策がとられなければ、英国で51万人、米国で220万人が死亡することも考えられるとの驚くべき予測を発表した。

 致死率や感染力など、COVID-19の詳細については、いまだ予備的仮説の段階にとどまっているが、インペリアル・カレッジは現在の新型コロナウイルスの感染率に基づき仮説を立て、米英両国で80%以上の国民が感染すると予測している。

 しかし同時に、学校や事業所閉鎖など徹底的に対人距離を確保するなどの対策を実施すれば、医療サービスへの負担が管理でき、死者数を大幅に減らすことができるとも強調した。

■被害軽減策か封じ込め策か

 インペリアル・カレッジの研究は、感染拡大の抑制を目指す被害軽減策と、感染縮小とコントロールを目指す封じ込め策という二つの考え方における効果を検討した。

 すると、たとえそれが厳格に講じられたとしても、被害軽減策では英国および米国で集中治療室の対応能力が圧迫され、多数の死者が出るとの予測が示された。

 一方、封じ込め策については、国民全員が対人距離を確保する、感染が確認された患者の家族を全員隔離するといった措置が必要となることが指摘された。対人距離に関しては、その確保が緩和されると感染者が急増するとしている。

 概して、封じ込め策では「著しい社会的および経済的損失」が発生する。封じ込め策は、広くワクチン入手が可能になるまで続ける必要があるが、ワクチン開発には18か月ほどかかるとみられている。

 今回の研究に基づき英国政府は方針を転換し、可能な限り人々に自宅にとどまるよう呼び掛けている。英政府は当初、介入を最小限に抑え「集団免疫」を取得する戦略を発表していた。

 しかし、インペリアル・カレッジの研究は、集団免疫戦略は英国で25万人、同様の戦略が米国で実行された場合110万人が死亡すると指摘している。また、フランスについては、抑制策が実施されなければ国民の50%が感染し、数十万人が命を落とす恐れがあると警告している。

 他方で、手洗いや顔に触らないなどのアドバイスをする他にどのようにウイルスの影響を抑えるかということについては、各国政府が社会的・経済的利益とのバランスを取らなければならないとも述べている。

 豪メルボルン大学(University of Melbourne)ピーター・ドハーティ感染免疫研究所(Peter Doherty Institute for Infection and Immunity)のシャロン・ルウィン(Sharon Lewin)所長は、「封じ込め策が実際に感染防止にどの程度効果があるのかなど、何が有効なのかを知る必要があるが、まだ明確には分からない」と語った。

 同所長は、昨年12月に新型コロナウイルス感染症の発生地となり、厳重に封鎖されている中国・武漢(Wuhan)を引き合いに出し、完全にウイルス拡大を止めるには武漢のような対策が必要になるのかも分からないとAFPに述べた。(c)AFP/Paul RICARD