【4月15日 AFP】17歳のサッカー選手イリヤ・イビッチ(Ilija Ivic)は、世間の嫌がらせに屈することなくプレーすることだけを望んでいる。しかし、セルビア人として初めてユース世代のコソボ代表でプレーすることになると、今も民族間の激しい分断がある国で代償を支払う状況に置かれている。

 2月にコソボのU-19代表チーム入りをオファーされた後、イビッチはインターネット上で攻撃の標的となり、メディアからも厳しい目を向けられた。

 中でも最も厳しい反応は同胞であるセルビア人からのもので、アルバニア系住民が大多数を占めるコソボでプレーすることで「裏切り者」のレッテルを貼られた。セルビアはかつて国の一部だったコソボの独立について、これまで一貫して認めていない。

 20年前の血なまぐさい戦争で独立を宣言したコソボには、現在もセルビア政府に忠実な少数派が住んでおり、アルバニア系の隣人と交わることはめったにない。

 コソボの首都プリシュティナに本拠地を置く所属チームのKFフラムルタリ(FK Flamurtari)からイビッチがU-19代表入りの招集を受けた際には、セルビアで猛反発が巻き起こり、首都ベオグラードのタブロイド紙には、「コソボに爆弾、あるセルビア人選手がコソボのチーム入り」との見出しが躍った。

 そうした反発は家族にも及び、コソボにあるセルビアの飛び地グラチャニツァ(Gracanica)で働いていた母親のタニア(Tanja)さんは、即座に解雇された。現在は高校で経理を務めている夫ドゥサン(Dusan)さんの収入で生活を維持しているが、一家の主も「自分も同様の仕打ちに遭うかもしれない」と話していた。