【3月16日 AFP】新型コロナウイルスの流行で注目された、通常よりも多くの人にウイルスをうつす、いわゆる「スーパースプレッダー」は果たして存在するのだろうか。

 スーパースプレッダーは、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)といった過去の感染症流行時には登場した。

 しかし、スーパースプレッダーという言葉は科学的ではなく、決まった定義はないと、ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の専門家アメシュ・アダリヤ(Amesh Adalja)氏は指摘する。

 新型コロナウイルスの感染確認例をみると、1人から平均2~3人に感染が広がっているようだが、これまでに少なくとも2人のスーパースプレッダーの例があったとみられている。

 一人はシンガポールに渡航した後、アルプス(Alps)にスキーに行った英国人で、数十人に感染させたとみられている。もう一人は韓国の女性で、やはり数十人にうつした可能性がある。

 しかし、世界はますます簡単に行き来できるようになっており、感染源として1人の患者だけをたどることは困難だ。

 仏ピティエサルペトリエール大学病院(Pitie-Salpetriere University Hospital)の感染症・熱帯病科のエリック・コーメ(Eric Caumes)医師は「2、3人ではなく数十人に感染を広げるスーパースプレッダーが存在する可能性はある。問題は見分けることができないことだ」と語った。

 また、感染における子どもたちの役割についても未知の状態だ。子どもたちは感染しても症状が軽いが、周囲に感染を広げる可能性がある。多くの国が学校閉鎖の措置を取っているのはそれが一因だ。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)の応用統計学教授クリストル・ドネリー(Christl Donnelly)氏は、すべての病気の感染はそもそも「非常に変動的」なものだと言う。「私たちは全く同じではない。免疫系も、行動も、どこにいるかも違う」

 また、英エクセター大学(University of Exeter)の伝染病専門家バラト・パンカニア(Bharat Pankhania)氏は、感染を決定づける最大の要素は環境で、人口密度の高い都市では状況が悪くなると説明する。「そうした環境とは、人混み、換気の悪い密閉空間、不十分な感染予防、ウイルスの長時間生存を可能にする非多孔質の硬い表面、ウイルスの好む湿度、ウイルス分泌のピークとなる発病初期にある感染者の存在が挙げられる」 (c)AFP/Julie CHARPENTRAT