■経済的損失は最大2.7兆ドル

 ブルームバーグ・エコノミクス(Bloomberg Economics)によると、新型コロナウイルスの影響により世界の株式市場の時価総額は9兆ドル(約922兆円)減少した。また、経済的な損失は最終的に最大で2兆7000億ドル(約280兆円)となる可能性がある。

 経済を回復させたくてたまらない中国政府は、既に炭素集約型のインフラ計画に湯水のように資金を投じている兆しがある。これと同じ現象が、2008年や15年の経済危機の時にも起きていた。

 CREAの主席アナリスト、ラウリ・ミリビルタ(Lauri Myllyvirta)氏は「経済刺激策の初発表時には、環境問題への言及は一切なかった」と指摘する。石炭火力発電所の新設規制をさらに緩和するとの提案は、炭素負債と排出量への懸念が無視されていることを示していると、ミルビエルタ氏はAFPの取材に語った。

 中国では10年前、政府主導による設備投資が急増し、クリーンエネルギーへの移行が減速、12~13年冬季に猛烈な大気汚染が発生した。

 世界的には化石燃料の燃焼によるCO2排出量は10年には6%近く増加したが、これは09年にわずかながら減少した分を相殺する以上の増加幅だったと、ノルウェーの国際気候研究センター(CICERO)のグレン・ピーターズ(Glen Peters)氏は指摘している。

 地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」で設定された気温上昇を産業革命前の水準から2度未満、可能であれば1.5度未満に抑えるという目標を達成するのがいかに難しいかということが、新型コロナウイルスの流行で明らかになっている。

 CO2汚染を急速に削減するのは、世界経済が持続的に崩壊するかもしくは、戦時体制を敷きCO2排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」経済へ移行するよう国際的に協調するかという2種類の状況しかないと、専門家らは指摘している。前者は受け入れがたく、後者は実現する可能性が低い。

 パリ会議では、フランスが2年近くかけて継続的にシャトル外交を行ったことが成功につながった。だが、COP26ではそのような外交努力は行われていないとアナリストらは指摘している。

 世界最大の炭素汚染国で、世界の排出量の29%を占める中国が重要な役割を果たすべきだが、国内問題に気を取られる可能性が高い。

 仏パリにある持続可能開発・国際関係研究所(IDDRI)の幹部セバスチャン・トレイヤー(Sebastien Treyer)氏は、「中国政府の最大の目的が健康危機を解決することになる恐れがある」と指摘した。(c)AFP/Marlowe HOOD