【3月6日 AFP】新型コロナウイルスの感染が拡大している韓国では、世界各国から入国制限措置が取られて東京五輪に向けた準備が混乱に陥っており、自発的に母国を離れる選手がいる一方で、大会出場自体ができなくなるリスクにさらされている選手もいる。

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 韓国は五輪参加に真剣に取り組んでおり、2012年ロンドン五輪ではメダル順位で5位に入る金メダル13個、2016年リオデジャネイロ五輪では同8位に入る金メダル9個を獲得した。しかし、東京五輪まで5か月を切る中、新型コロナウイルスの国内感染者は6日の時点で6000人を超えており、これは中国を除いて世界で最も大きな数と伝えられている。

 現時点で渡航制限を設けている国と地域はかなりの数に上っており、五輪開催国の日本を含めて20以上の国が、韓国からの入国者に対して2週間の隔離を命じている。さらに、約40を超える国と地域が、同国に滞在していた外国人の入国を制限している。

 そのため、例外措置が取られない限り韓国はこれらの国で開催される国際大会への参加は不可能な状況で、各競技のランキングポイントに影響が出るほか、五輪の出場権獲得が危ぶまれる状態となっている。

 13日から15日までロシアで開催される柔道のグランドスラム・エカテリンブルク大会(Judo Ekaterinburg Grand Slam 2020)に向けて、韓国代表は来週にも現地入りする予定だったが、ロシア政府は4日に韓国からの入国者に対して2週間の隔離措置を発表。さらに、今後予定されている柔道大会のほとんどが、トルコ、モンゴル、カタールなどすでに韓国に対して入国制限を設けている国となっている。

 現在、ロシア当局に例外措置を講じるように働き掛けている韓国柔道連盟(KJA)の関係者は、「かなり厳しいのは、こうした国が増え続けているということだ。状況はほぼ1時間ごとに変化している」とコメント。それでも、東京五輪では全14階級のほとんどに参加することを目指していると明かした。

「しかし、スポーツは何が起きるか分からない」「グランドスラムでもグランプリでも、突如として伏兵が現れることがある。そして、わが国のアスリートの一人が、わずか1ポイントで出場権を逃す可能性に直面している」

 リオ五輪において、韓国はアーチェリーとテコンドーでそれぞれ5個ずつメダルを獲得する好成績を記録した。しかし、アーチェリーの国内代表選考会は、新型コロナウイルスの影響で今週に入って無期延期が決定。ここで決まった代表選手団は5月にトルコ・アンタルヤ(Antalya)で開催されるW杯(Archery World Cup)に派遣されるはずだったが、同国では入国制限が設けられている。

 同様にテコンドーも、5月にレバノンの首都ベイルートで開催されるアジア選手権(Asian Taekwondo Championships)に選手を派遣する予定となっており、関係者が同国政府に対して入国制限の例外措置を講じるように模索している。

 現在、ボクシングのアジア・オセアニア予選が開催されているヨルダンも、韓国に対して入国制限を設けているが、ウイルス検査で陰性であることを条件に同国選手の参加を承認。選手団のトレーナーは、「本当に厳しい遠征になった」とインスタグラム(Instagram)に投稿した。

 一方、韓国スポーツ界のスター選手の中には、母国でウイルス感染者が増加している中で、渡航制限を回避する動きに出ているケースがある。

 韓国は女子ゴルフのランキングで、トップ13に6人が入っているなど圧倒的な強さを見せている。朴仁妃(In-Bee Park、イン・ビー・パーク)ら3選手は、米国が入国制限を課す可能性がある中で、予定より早く渡米。世界ランク1位の高眞榮(Jin Young Ko、コ・ジンヨン)は、母国への帰国をキャンセルした。

 また韓国卓球協会(KTTA)は、今月末に選手団を海外に派遣して滞在を続け、混乱を回避することを検討しているという。

 すでに、今週開催されているカタール・オープン(2020 World Tour Platinum Qatar Open)は断念を余儀なくされた代表チームは、東京五輪の出場枠を確保しているものの、国際大会を欠場すれば世界ランキングを上げるチャンスや五輪のシード権も失う可能性がある。

 大韓体育会(KOC)は、毎日のように殺菌消毒が行われている鎮川(Jincheon)のナショナルトレーニングセンターから選手が離れることを禁じるなどの安全措置を講じていることに加え、継続的な大会参加を守るべく、国際オリンピック委員会(IOC)と話し合っていると明かした。(c)AFP/Sunghee Hwang