【4月6日 AFP】シュウ・ファン(Zhu Fang)さん(75)の自宅の居間の壁には、期待に胸を膨らませた独身者の写真が何枚も張られている。一部の色あせた写真には、髪を膨らませた古風なヘアスタイルと時代遅れの服を着た人たちが写っている。シュウさんは50年近く、中国・北京で男女の仲を取り持ってきた人気の仲人だ。

 シュウさんが男女の橋渡しをしてきた50年で、中国社会は劇的な変化を遂げた。

 家父長制社会では伝統的に結婚が重要視されてきたが、最近では婚姻率は減少し、2018年の出生率は70年ぶりの低水準に落ち込んだ。

 だが、人々が愛を探していることに変わりはないとシュウさんは主張する。今でもシュウさんには仲人を頼む電話が頻繁にかかってくる。

「意味のある仕事だから続けている」と話すシュウさんだが、実入りがいいわけではなく、子どもたちからの金銭的支援に頼っている。

 シュウさんは毛沢東(Mao Zedong)の「人民に奉仕する」という政治スローガンに触発された。「他人が幸せを見つける手助けをすれば、自分も少し幸せになれると思った」

 シュウさんは入会費として1人200元(約3100円)を受け取っている。会員の大半は成人した自分の子どもに結婚相手を探している高齢の親だ。

 昨年12月のある寒い朝、シュウさんの自宅兼事務所は中高年の親たちでいっぱいになった。親たちは見合い相手のプロフィルをまとめたファイルにかがみこみながら、自分の未来の義理の息子や娘にふさわしい相手を探していた。

 ある女性は、夫と死別した娘のことを心配していた。「北京に持ち家があり、娘にはお金もある」「すべて順調だ――孤独なことを除けば」