【3月9日 AFP】女子体操のオクサナ・チュソビチナ(Oksana Chusovitina、ウズベキスタン)は、44歳にして難なく東京五輪の出場権を獲得し、10代の神童が席巻している同競技において、自身が樹立した歴代最多記録を更新する通算8回目の五輪に備えている。

 母国の首都タシケントでインタビューに応じたチュソビチナは、「体操が大好き。自分に言い聞かせているのは、まだできるのになぜ練習して演技をしないのか? ということ」とすると、「もしやめたら、すごく後悔することになると思う」と語った。

 しかし、まだ競技への熱意を燃やしていながらも、「最大のモチベーション」になっている家族に対しては、今年の東京五輪が自分にとって「最後の五輪」になると話しているという。

 旧ソビエト連邦代表としてキャリアをスタートさせたチュソビチナは、ソ連崩壊後の1992年バルセロナ五輪では独立国家共同体(CIS)の選手として出場し、見事に団体金メダルを獲得したが、個人種目のメダル獲得にはそれから16年、つまり五輪4大会も待たなければならなかった。

 1999年に息子のアリーシア(Alisher)さんを出産すると、白血病を患った愛息の治療のため2002年にドイツに移住。2008年の北京五輪には同国代表として出場し、種目別の跳馬で銀メダルを獲得した。

 2016年のリオデジャネイロ五輪で体操史上初の7大会連続出場を果たしたチュソビチナだが、母国ウズベキスタンの代表として五輪に出場するのは、東京大会が通算5度目となる。人口約3300万人のこの国で、同選手は切手になるほど崇拝されている。

 跳馬の練習の休憩時間にAFPの取材に応じたチュソビチナは、競技の第一線から退くように説得したのは現在20歳になったアリーシアさんであると明かし、「彼は私のことをとても心配している。大けがをしたり病気になったりしないかとね」と話した。

 また、五輪で特に自分の思い出として残っているのは、自分より10歳も年下の中国と北朝鮮の選手と一緒に表彰台を分かち合った北京五輪から母国に帰国したときのことだといい、「戻ってきたとき、ドクターから息子がようやく元気になったというニュースを聞かされた。母親にとって、このニュースはどのメダルとも比べることはできないと思う」と語った。