【3月15日 AFP】フランスを第二の故国とし、フランス文化を受け入れてフランス語を学び、税金を納め、市町村議員として地域に貢献してきた英国人750人余りが今月、議員資格も投票権も喪失する。仏各地の小規模自治体では、地元行政を担う貴重な人材の「途方もない損失」に不安を募らせている。

 フランスでは、仏国籍者に限定された市町村長職を除き、欧州連合(EU)諸国の出身者に地方議員の被選挙権を認めている。英国人も2001年から被選挙権を有してきた。

 だが、英国は今年1月31日をもってEUから離脱し、50年近くにわたる欧州共同体加盟の歴史に幕を引いた。これにより英国人の仏市町村議員は議員資格を喪失し、3月の地方議会選まで任期を全うすることだけが認められた。

 在仏英国人はもはやEU市民でなくなるため、地方議会選での投票権も失う。

■「やる気ある人いない」

「小さな町では、やる気のある人物はなかなか見つからない」。定数11人の議員のうち2人が英国人という北西部ノルマンディー(Normandy)地方ののどかなコミューン(基礎自治体)、ペリエアンボーフィセル(Perriers-en-Beauficel)のリディ・ブリオンヌ(Lydie Brionne)町長はこうぼやいた。

 2014年の地方選で地元議員の誰より多く得票したのは、当時移住して10年目の英国人パトリック・ヘッド(Patrick Head)さん(64)だった。人口216人のうち約50人が英国からの移住者だ。

「これまで約20年間、たくさんの英国人が移住してきて人口を増やし、町に活力を与えてくれた」とブリオンヌ町長。それだけに、ブレグジット(英国のEU離脱)後に「英国人たちが帰国せざるを得なくなるのを恐れている」という。

 フランス国内には3万5048の地方議会があり、うち712議会が英国人議員を抱える。全国に約50万人いる地方議員に占める外国人議員数は2500人近くに上り、その約3分の1に相当する757人が英国人だ。

■過疎地支えてきた英国人移住者

 中部ジュアック(Jouac)のビルジニー・ウインドリッジ(Virginie Windridge)町長(39)は、夫が英国人だ。町の人口は180人ほどで、2人いる英国人地元議員は「新しい発想や、異なる物の見方や運用方法をもたらしてくれた」という。

「この地に何年も住み、納税し、地域社会に貢献してきた人々が一夜にして権利を失い、『黙って金を出す』以外できなくなるのは非常に不公平だ」とウインドリッジ町長は批判した。「受け入れがたいことだ」

 英公式統計によるとフランスには15万7000人余りの英国人が住んでおり、スペインに次いで多い。英国人移住者は多くの場合、過疎化の進む仏地方部で、若者が都市部に流出した後に残された空き家や後継者のいない商店・事業を引き継ぎ、新たな活気を吹き込んでいると高く評価されている。(c)AFP/Antoine AGASSE with AFP bureaux in Bordeaux and Toulouse