【2月1日 AFP】ドイツ・バイエルン(Bavaria)州北部の小さな村、ガートハイム(Gadheim)に、地元自治体、ドイツ、欧州連合(EU)の3種類の旗がはためいている一角がある。ここは、英国のEU離脱(ブレグジット、Brexit)後にEUの地理上の中心となる場所だ。

 この中心地となった農場を所有するカリン・ケスラー(Karin Kessler)さんは、ガートハイムが新たな名誉を授かったことについて、複数の住民が「複雑な気持ち」を抱いていると話す。

 ケスラーさんが、自分の土地がEUの中心地になることを知ったのは、英国が離脱の是非を問う国民投票を実施してから9か月たった2017年3月のことだった。初めはエープリルフールの冗談だと思ったという。

 だが、この地点を表す北緯49度50分37秒、東経9度54分7秒という座標は、仏国土地理院(IGN)が、英国を除いた加盟国の領土から計算し求めた「中心」だ。

 ケスラーさんの息子が座標を見つけ、メッセージアプリの「ワッツアップ(WhatsApp)」でその地の写真を送ってくれた。拡大してみると近所のようだったのでそう返事をしたところ、息子に「うちの土地だよ!」と言われたと、ケスラーさんは当時を振り返った。

 この地が新中心地に決まると、自治体や地元の造園学校は、中心地をアピールする計画を急いで練った。ブレグジットをめぐっては話が二転三転し、本当に離脱するのかさえも定かではなかったが、計画だけは進めたという。

「英国での議論はもちろん追っていた。いつも携帯電話でニュースをチェックしていた。いつまでも終わらない話のように思えた」「時々、英国人はブレグジット以外に話すことがないのではないかと思ったほどだった」とケスラーさんは述べた。

 新たな中心地には今、地元産の大きな石灰岩が置かれ、その上に赤と白のポールが立っている。このポールは、ここから北西に60キロほど離れたこれまでの中心地ウェステルングルント(Westerngrund)の方向を指している。

 ガートハイムの住民にとって一つだけ確かなことは、時間をかけて準備をしたが、これまでのEUの地理上の中心地と同様に、いつまでもここが中心地ではないだろうということだ。

 ガートハイムを管轄するファイツヘーヒハイム(Veitshoechheim)のユルゲン・ゲッツ(Juergen Goetz)町長は、「これまでに中心地が移動したのは、新たな加盟国があった時だけだった。離脱によって中心地が変わるのは歴史的だ」と話した。

「次回、中心地が変わるときは新たな国が加盟した時であってほしい」 (c)AFP/Tom BARFIELD