【2月16日 東方新報】17年前に中国で大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の克服に貢献した「英雄」が、新型コロナウイルスとの闘いで再び表舞台に現れた。呼吸器疾患の専門家・鍾南山(Zhong Nanshan)医師だ。83歳という年齢をものともせず、政府の新型ウイルス対策チームのリーダーに就任。感染の中心地・武漢市(Wuhan)や北京市など各地を飛び回り、陣頭指揮に当たっている。

 鍾医師は広東省(Guangdong)の広州市(Guangzhou)呼吸器疾病研究所所長をしていた2002年末から2003年にかけ、広東省から始まったSARSの流行にいち早く気づき、有効な治療法を見つけて各地で防疫・治療活動を指揮した。患者の集中治療と感染拡大防止のため北京市郊外に専門病院をつくることも提案、その責任者となり、連日奮闘する姿はテレビで伝えられた。

 また、地方政府などが実態を隠そうとする姿勢を告発。早期終結を図りたい政府にも「医学的に制圧したとはいえない」と注文をつけた。「病院で仲間が倒れているのに、うそはつけない」という使命感と、一人の共産党員として正義を貫く姿勢から、「2003年に中国を感動させた10人」にも選ばれ、その後は中華医学会長なども歴任した。

 そして1月19日、対策チームのリーダーに就任した鍾医師は、武漢市内の病院を視察。翌20日には中国中央テレビ(CCTV)の取材に「人から人への感染があるのは間違いない」と明言した。この発言で「市場の動物から人に感染しているが、人から人への感染は確認されていない」としていた当局の見解が一変。習近平(Xi Jinping)国家主席が同じ20日、「国民の命と健康を第一に考え、効果的な措置をもって感染拡大を断固抑える」という重要指示を表明すると、大胆な対策が次々と実行された。

 23日から武漢市を事実上封鎖し、24日には武漢市に専門病院を建設することを発表。これは鍾医師がSARS退治で北京郊外に専門病院を建設させたのと同じ対策で、100台近いブルドーザーが24時間稼働し、今月に入り専門病院2か所を突貫工事で完成させた。