【2月23日 AFP】18世紀初めに作られたフルートを基にリメークされた2本のフルート──2001年に手作業で作られたものと、2019年に3Dプリンターで「複製」されたプラスチック製のもの。大きく異なる方法で作られた2本だが、それぞれで同じ曲を演奏すると、音だけを聞いた審査員はその違いが分からなかったという。

 この実験を行ったのは、仏パリにある音楽博物館(Museum of Music)。2500年前にハゲワシの骨で作られたフルートも保管してある同館で、音楽家のミナ・チャン(Mina Jang)さんが演奏に臨んだ。同館ではこのほど、古楽器の保存について見直すため、3Dプリンター技術を用いた実験を始めた。

 3Dプリンターの強みは、作製時間と費用にある。作業場で1か月かかるものは24時間で、数千ユーロ(数十万円)かかっていたものは数百ユーロ(数万円)で仕上げることができる。

■古楽器を壊すことなく音色を楽しむ

 しかし、実験室長のステファン・ベデリーシュ(Stephane Vaiedelich)氏は、今回の試みは純粋に音楽遺産の保存を目的に行われたと説明する。

「3Dプリンターは楽器メーカーに取って代わるものではない」と、ベデリーシュ氏はAFPに語った。「(実験の)意図は、歴史的な楽器を再現することにある。そうすることで人々が歴史的な楽器の音色を楽しむことができるし、重要な遺産を生き返らせることができる」

 古楽器を演奏する楽団もわずかながらあるが、管楽器は湿気に弱い。「木が膨張し(楽器が)壊れる可能性がある」とベデリーシュ氏は指摘する。

 楽器メーカーと修理業者の労働組合で副会長を勤めるファニー・レイヤー・メナー(Fanny Reyre Menard)氏は、3Dプリンターで作製した楽器について、材料が唯一の欠点だと述べた。

「職人にとって、プラスチックと木材は比べ物にならない」とメナー氏は言う。 一方で、3Dプリンターは大局的には恩恵をもたらしているという。

「職人の間で、情報や原型を共有するのに非常に優れたツールだ」とメナー氏は指摘。「面白そうな型を見つけたら、仲間にデータを送り、仲間が(3D)プリントすることができる。素晴らしい」 (c)AFP/Rana MOUSSAOUI