■沈黙を守るイスラム教国

 ウイグル人コミュニティーをさらに不安にさせているのは、ウイグル人に対する中国の扱いに対し、パキスタンからエジプトまでイスラム教徒が大半を占める国々が沈黙を守っていることだ。これらの国々は、経済的な影響力が大きい中国と対立することを避けているのだ。

 サウジアラビアは石油の最大輸出国である中国との関係を深めており、特に懸念されている。

 中国の国営メディアは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)の昨年の発言を引用し、サウジアラビアは「中国が対テロおよび脱過激化」の措置を講ずる権利を支持していると報じた。

 さらにサウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏がトルコのサウジ総領事館で殺害された事件をめぐる裁判で、同皇太子の側近が無罪になったことは国際的に批判された、中国は今年に入りこの判決への支持を表明している。

■中国帰国後、消息不明に

 サウジアラビアに在留するウイグル人はわずか数百人と推定されている。主に神学校の学生、貿易業者、亡命希望者などで、その多くは中国で拘束されている家族とのつながりが絶たれている。

 サウジアラビアに住むあるウイグル人実業家は、不法滞在となった同胞ウイグル人の期限切れのパスポート8冊のコピーをAFPに示しながら、彼らの多くが中国のスパイだと疑われることを恐れており、隠れて暮らすことを余儀なくされている人もいると語った。

 また、サウジアラビアに留学中のウイグル人学生はAFPに、友人3人が2016年後半に強制送還され、中国到着後に「消息不明」となったと語った。友人らは中国政府が対過激派対策だと主張するいわゆる「再教育施設」にいる可能性が高いという。

 アユップ氏はAFPに、2017年以降サウジアラビアで5件の強制送還を確認していると語ったが、5件以上あるとするウイグル人活動家もいる。エジプトやタイでも同様に、ウイグル人の強制送還が報告されている。

 強制送還が、中国からの圧力を受けサウジアラビア政府が実施したものか、同国独自の不法滞在者の取り締まりによるものかは定かではない。サウジアラビア当局はコメントの要請に応じていない。

 在サウジアラビア中国大使館は「サウジアラビア当局と協力してウイグル人を強制送還」してはいないとAFPに語った。パスポート更新の拒否について尋ねると同大使館は、ウイグル人の「兄弟姉妹」のための領事業務は停止していないとのみ答えた。