【1月22日 AFP】韓国軍は22日、男性として志願入隊し、その後性別適合手術を受けたトランスジェンダー(性別越境者)の20代の兵士を除隊させる決定を下した。兵士は同日、記者会見に臨み、軍人であり続けたいと涙ながらに訴え、除隊処分の撤回を求めた。

 韓国は、性自認の問題に関して保守的な考えが根強く、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の権利をめぐっても、他のアジア諸国に比べて不寛容さが目立つ。

 2017年に自ら志願して入隊していたピョン・ヒス(Byun Hee-soo)さんは、昨年11月にタイで性別適合手術を受けた。

 ピョンさんは20日、当初伏せていた実名を公表し、迷彩服で記者会見に臨んだ。集まった報道陣を前に軍隊式の敬礼をし、「私は大韓民国の兵士です」と述べた。

 軍人になるのが子どもの頃からの夢だったというピョンさんは、性別違和によりうつを患い、性別適合手術に踏み切ったと明かした。

 ピョンさんは涙をこらえながら「性自認はどうあれ、私もこの国を守る優秀な兵士の一人になれるのだということを、皆に証明したいのです」「どうか私にそのチャンスを下さい」と訴えた。

 ピョンさんは、軍務の継続を望んでいたが、軍の審査委員会は22日、ピョンさんの強制除隊処分を決定。

 軍は、同国で初となったピョンさんの事例は「服務継続不可とみなされる理由の一つに相当する」と発表したが、具体的な詳細には触れなかった。また「不当な差別や処遇」を避けるためとも説明した。

 国防省によると、ピョンさんが一連の検査を受けた軍病院が、男性器がなくなったことを精神的または身体的な障害と診断したため、今回の審査委員会の開催につながったという。

 韓国は、核兵器を保有する北朝鮮から自国を防衛するために徴兵制を設けており、健康な男性には約2年に及ぶ兵役義務がある。

 国際人権団体はこれまでにも、韓国の同性愛の兵士らに対する処遇をめぐって懸念を示してきた。 韓国では、一般市民による同性愛行為は犯罪とはみなされないものの、兵士らの同性愛行為は禁じられており、発覚した場合は2年以下の禁錮刑に処される可能性がある。(c)AFP