【1月16日 CNS】冬の凍えるような風の中、中国・北京市にある国家体育総局のスポーツ選手宿舎前で13日早朝、中国卓球代表の選手はすべての装備をたずさえて整列した。今回の目的地は練習場でも試合場でもない。——30キロメートル離れた軍隊の軍事訓練センターだ。

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 中国代表の全選手は一週間、充実した、尋常でない軍事訓練を受ける。東京五輪の開催まで200日を切り、代表チームが選んだのは卓球の練習場から出て、軍隊のキャンプに入ることだった。本来、五輪での戦いへ向けた仕上げを集中的に行うべき時期に、軍事訓練を選んだ目的は何だろうか?

 五輪への最も重要な準備期間に軍事訓練を行うことについて、中国卓球協会の劉国梁(Liu Guoliang)会長には、考え抜かれた思惑がある。「五輪への挑戦が、重く難しいことを承知しているからこそ、最後の仕上げ段階に軍事訓練を組み込んだのです。軍人には『苦しみを乗り越え困難を恐れない』精神がある。それを学び、卓球の練習の中でそれを実行し、試合会場に持ち込む。大舞台になればなるほど、考え方や心の準備が、戦術よりよほど重要となるのです」と語った。

 軍隊のキャンプに入り、軍服を身にまとうと、世界王者も中国代表のキャプテンも関係ない。普段は笑ったことのないコーチも、みんなと同じように軍服を着て整列する。

 劉会長は「これは卓球中国代表の良き伝統です。軍事訓練を通してチームの心が一つになり、戦闘力と団結力を身に着けることができる。訓練の中で、チーム全員が心を静め、最も高いレベルの、最も厳しい基準で五輪での戦いの必要性について考えてもらいたい」と話す。

 昼になると、中国代表の第一チームと第二チームの選手、コーチを含む144人が班を一つの単位としてしっかりと整列をし、既定の指令をこなしていた。隊長を務める馬竜(Ma Long)は「この一週間、簡単な軍事訓練の中で、容易ではない戦いへの備えを学び取りたい」と語った。

 東京五輪に備えるため、中国代表は春節(Luna New Year、旧正月)の休暇期間中も訓練を続け、除夜(旧暦のおおみそか)は朝から晩まで練習をする。春節の翌日には、欧州に移動してドイツオープンに出場を予定している。劉会長は「五輪の年は、みんなが年越しの感覚を忘れてしまうのです」と笑った。(c)CNS/JCM/AFPBB News