【1月15日 CNS】中国・ラサ市(Lhasa)から西寧市(Xining)に向かう列車内で2019年10月25日午後6時20分、寝台車両にいた妊婦が突然陣痛に見舞われた。車掌長はすぐに沱沱河(Tuotuohe)駅に緊急下車させ、沱沱河医療救急ステーションに搬送。午後6時35分、妊婦は無事に男の子を出産した。

「あの場面を思い出すたびに、幸せな気持ちでいっぱいになります。私たちの仕事は本当にやりがいがあると感じました」

 青海省(Qinghai)海西州(Haixi)ゴルムド市(Golmud)第2人民病院の青海チベット鉄道(Qinghai-Tibet Railway)医療保障科沱沱河医療救急ステーションの張偉芳(Zhang Weifang)医師は、今でも当時のことをはっきり覚えている。北極、南極に次ぐ「世界の第三極」と呼ばれるチベット高原に沱沱河医療救急ステーションが発足して13年。初めて新しい命を迎えた瞬間だった。

 沱沱河医療救急ステーションは、標高4533メートルの長江の水源地・ゴルムド市タンラ(Tanggula)山鎮に位置し、5人の医療スタッフが24時間体制で勤務している。主要任務は青海チベット鉄道の列車に乗り、突然の病に襲われる乗客を救助、搬送することだ。すべての列車に医師1人と看護師1人が乗車し、医療用酸素ボンベと50種類以上の薬を列車に持ち込む。同時に、周辺地域に住むチベット人や鉄道作業員、運転士にも医療サービスを提供している。

「環境上の制約から救急ステーションの医療設備は簡素なものしかなく、医療環境は厳しいため、医師の責任感と専門的な資質が問われます」と張さん。

 青海チベット鉄道のゴルムド─ラサ間は全長1142キロメートル。そのうち標高4000メートル以上の区間は960キロメートルもあり、タンラ山脈を越える標高は最高5072メートルに達する。この区間の運行中は低酸素状態が長時間続き、乗客は高山病にかかるなど体調を崩しやすいため、ゴルムド市第2人民病院が2006年7月に青海チベット鉄道医療保障科を設立した。

 2019年12月31日まで、医療チームは計2万7000回乗車し、乗客144万5600人を診察した。そのうち5556人の患者が沱沱河医療救急ステーションで治療を受けた。高山病を治癒する成功率は100%で、医療事故は起きていない。(c)CNS/JCM/AFPBB News