【12月23日 AFP】2016年に亡くなった巨匠故アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda)監督が、愛する日本の風景を描きとめたスケッチの作品展が故国ポーランドで開催されている。日本訪問時に描いた100点以上に及ぶ作品を通じ、映画・舞台監督として知られるワイダ氏の日本をこよなく愛した画家としての側面を垣間見ることができる。会期は来年3月6日まで。

 作品展が開催されている南部クラクフ(Krakow)の日本美術技術博物館マンガ館(Manggha Museum of Japanese Art and Technology)は、ワイダ氏と妻のクリスティナ・ザフファトヴィチ(Krystyna Zachwatowicz-Wajda)さん(89)によって25年前に設立された。建設費用には、1987年にワイダ氏が日本のノーベル賞(Nobel Prize)とも称される「京都賞(Kyoto Prize)」を受賞した時の賞金が充てられている。

 ザフファトヴィチさんはAFPの取材に、ワイダ氏はポーランドの激動の歴史をテーマにした映画で知られたが、「誰よりも世界に興味を持っていた人だった」と語る。

「日本のノート(Japanese Notebook)」で展示されている作品は、寺や城、力士、コイ、歌舞伎役者、庭園、桜の木といったものが、素早いが調和のとれた筆遣いで描かれている。これら日本のものすべてに、ワイダ氏は魅了されていたという。

■浮世絵の影響

 ワイダ氏は戦時中だった10代の頃に浮世絵に接し、詳しくなった。その影響が作品中のベタ色塗りや斬新な遠近法、構図に見て取れる。

 例えば、鎌倉の大仏のスケッチは巨大な銅像を背後から描いており、背中の窓から日がもれ出る様子を捉えている。また、雨を複数の斜めの線で表現したスケッチでは、葛飾北斎(Katsushika Hokusai)をまね、線の1本を実際の雨のしずくでにじませている。

 ペンを使用した作品が大半だが、時には水彩絵の具や鮮やかな黄、赤、青のクレヨンを使った表情豊かな作品も手掛けた。作品には、漢字で名前が書かれた落款印が押されている。