【12月6日 AFP】(更新、写真追加)ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相(65)が6日、在任中の14年間で初めて、ナチス・ドイツ(Nazi)がポーランドに設置したアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所を訪れた。メルケル首相は、ナチスが犯した罪を認めることはドイツのアイデンティティーの重要な一部であり、反ユダヤ主義の増大に立ち向かう上でも必要なものだと表明した。

 ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)の象徴である同収容所の跡地を訪れたのは、ドイツ首相としてはメルケル氏が3人目。1945年1月27日に同収容所がソ連軍によって解放されてから来月で75年となり、これを前にしたメルケル氏による同地訪問は重要な政治的メッセージと受け止められている。

 メルケル氏は、ナチスによる犯罪を「記憶しておくことは…決して終わることのない責任の一つだ。わが国と不可分に結び付いている。この責任を認識することは、国家のアイデンティティーの一部だ」と表明。1940~45年に100万人のユダヤ人が命を落としたアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所での出来事はドイツの「深き恥」であると述べた。

 メルケル氏はまた、ドイツでは近年、ユダヤ人などに対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が「憂慮すべき水準」に達していると語り、「反ユダヤ主義と闘うためには、絶滅収容所の歴史が共有され、語られる必要がある」と指摘。アウシュビッツは「この記憶を生かし続けることを要求している」と述べた。

 ドイツ政府はメルケル氏訪問前日の5日、同収容所の関連財団への新たな寄付金6000万ユーロ(約72億円)を承認していた。(c)AFP/Yannick PASQUET