【11月30日 AFP】イタリア・セリエAは29日、全20クラブが共同で署名したファン宛ての書簡を公開し、各スタジアムで発生している人種差別は世界に恥をさらす行為であると訴えた。

 今回の書簡が公表されたのは、イタリアのサッカースタジアムで人種差別的チャントが相次いでいる問題を受けてのことだった。同国サッカー界は、書簡の中で羞恥と怒りの念をあらわにしたが、クラブ側が問題行為を止める十分な対策を講じてこなかったことも認めた。

 文章の言い回しを決める際には、ユベントス(Juventus)を筆頭に、ACミラン(AC Milan)やインテル(Inter Milan)などの主要クラブが作業部会に参加したという。

 その中ではイタリア語で「basta(もう十分)」という言葉を使いながら、「各クラブのスタジアムでは、深刻な人種差別の問題がある」と訴えていた。

 さらには、「われわれ自身が問題に対して十分な対策をしてこなかった。今季は恥ずべき映像が世界中に中継されてしまった」「サッカーでも人生でも、誰も人種差別の被害に遭ってはならない。われわれはこれ以上黙認するわけにはいかず、問題がなくなることを願っている」と述べられていた。

 サッカースタジアムでの人種差別行為はイタリア中で議論の的となり、専門家を交えてこの問題に取り組むための最善策が話し合われてきた。

 今月には元イタリア代表でブレシア(Brescia Calcio)に所属するマリオ・バロテッリ(Mario Barwauh Balotelli)が、エラス・ベローナ(Hellas Verona)戦において同選手いわく「一部のばか連中」から人種差別を受けたとして、試合の途中でピッチを去ろうとする問題が起きた。

 10月にはサンプドリア(Sampdoria)に所属する英国出身のMFロナウド・ビエイラ(Ronaldo Vieira)に対し、ASローマ(AS Roma)のサポーターが人種差別行為に及び、同クラブが謝罪する事態となった。

 また、ローマと同都市に本拠地を置くラツィオ(SS Lazio)も、ヨーロッパリーグ(UEFA Europa League 2019-20)で対戦したレンヌ(Stade Rennes FC)に対して地元ファンが人種差別的なチャントを浴びせたとして、欧州サッカー連盟(UEFA)からスタジアムの一部閉鎖処分を言い渡された。

 9月に行われたアタランタ(Atalanta)対フィオレンティーナ(Fiorentina)戦で、ブラジル人DFダウベルト・エンリケ(Dalbert Henrique)が人種差別の被害に遭ったとして審判に試合の中断を訴える問題が発生した際には、国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ(Gianni Infantino)会長が、イタリアサッカー界からの「人種差別排除」を誓っていた。

 その他の有名選手では、ベルギー出身でインテルでプレーするロメルー・ルカク(Romelu Lukaku)も人種差別の被害を訴えたが、所属クラブのファンからモンキーチャント(猿の鳴きまね)は人種差別ではないという内容の公開書簡を送られた。(c)AFP