【11月20日 東方新報】中国民用航空局(民航局)は11日、女子学生が飛行中の旅客機のコックピットに座ってVサインをした記念写真を、SNSの微博(ウェイボー、Weibo)にアップした事件について、この女子学生を機長席に座らせた桂林航空(Air Guilin)の機長に対し、旅客機の安全飛行に潜在的な脅威を与えたとして、厳重処分に該当するとの見方を示した。桂林航空はこの機長を永久飛行停止処分にしたほか、これを許したほかの乗務員にも無期限の飛行停止処分とし、原因調査を継続している。

 中国新聞週刊誌によれば、今月初めに微博で大量フォロワーを持つ人気アカウントが写真を取り上げたことで、ネットで大炎上。桂林航空側が調査したところ、女性は桂林旅游学院の航空乗務員学科専攻の学生で、今年1月4日に桂林発揚州(Yangzhou)行きの旅客機の飛行中、機長の許可を得て機長席に座らせてもらったという。この女子学生は学校からの調査を受けている。

 元の写真は、女子学生本人が自分のアカウントに投稿し、さらには「機長にとても感謝!すごく楽しい」とまでコメントをつけた。本人は「いいね」を稼ぐ記念写真のつもりだったようだが、「お前は楽しいかもしれないが、私たちは不安だ」「この若い女は何の身分で旅客機のコックピットに座っているのか?」と非難のコメントが集中した。

 ネットユーザーたちは、コックピットの様子や紙コップのロゴから桂林航空の旅客機で、飛行中に撮影されたものと特定。中国ネットニュースサイト澎湃新聞(The Paper)は、勤務中の機長が女子学生を機長席に座らせた理由について、二人が恋愛関係にあったと報じている。

 中国の関連法規によれば、コックピットに入ることができるのは乗務員、任務執行中の民航局監察員や委任代表、あるいは機長の許可を得た安全な運航に必要かつ有益な人間、あるいは機長の同意を得て特別な批准、合格証を所有する人員と規定されている。今回の女子学生のケースは、いずれにも当てはまらない。

 旅客機運航に無関係な人間が機長席に座ることは思わぬ事故を引き起こす可能性をはらむ。よく知られているケースが、1994年のロシアAF593で、機長が席を離れたすきに、副機長が15歳の息子と12歳の娘をコックピットに入れ機長席に座らせ、誤って自動運航システム解除のボタンを押してしまい墜落して、乗客75人が全員死亡した事件だ。

 ただ飛行中の機内においては機長が最高権力者であり、機長判断には誰もが従うが、その安全管理と監督にすきができることもたしか。中国では2011年、中国民航局飛行基準局職員のふりをした大学生が海南航空(Hainan Airlines)機の機長、乗務員らを信用させ、8回にわたりコックピットに侵入した事件があった。東海航空(Shenzhen Donghai Airlines)では、乗務員が自分の妻を3度コックピットに入れた事件が判明している。

 こうした状況は、表ざたにならないだけで中国の民航旅客機において普遍的に存在するリスクとみられており、今回の事件を契機に、徹底的に機長、乗務員に安全意識の再教育が必要との声が専門家から相次いでいる。(c)東方新報/AFPBB News