【12月1日 AFP】脳みそをむさぼり食う「生ける死体」が大量に町を襲い、人々を恐怖に陥れる――テレビや映画で「ゾンビ」は人気の題材となっているが、もちろん実在はしない。

 だが、動物界では宿主の行動を変化させるゾンビのような寄生生物が確認されている。また人間も、寄生生物によって操られているという証拠が増えている。

 これらは、米アリゾナ州立大学(Arizona State University)の理論進化生物学者アテナ・アクティピス(Athena Aktipis)氏の研究テーマだ。同氏は自身のポッドキャスト番組「Zombified(ゾンビ化される)」で、終末論的なゾンビの話を現実世界の科学に当てはめて説明しようとしている。

 アクティピス氏はAFPの取材に「地球上で知られている生物種の半数以上は寄生生物だ」と語る。

 例えば、フィオコルジケプス属の菌類は胞子を放出してオオアリの体に感染し、移動行動を支配する。宿主となったオオアリは開口障害を引き起こす破傷風に似た感染症にかかり、植物を顎で強くかんだまま動けなくなり絶命する。その後、そのオオアリの頭からキノコ状の胞子のうが生えてきて、放出され、別のオオアリが新たに感染する。このサイクルが2~3週間で繰り返される。

 また、カリバチの一種クリプトキーパーは、オークの木に「虫こぶ」と呼ばれる空洞を作って寄生するタマバチの捕食寄生者だ。クリプトキーパーはタマバチの幼虫がいる虫こぶに卵を産み付ける。タマバチは成虫になると木に穴をあけて外に出ようとするが、クリプトキーパーの幼虫がタマバチに寄生して行動を操り、タマバチ自身は通れない大きさの穴を開けさせる。タマバチが頭だけ出た状態で動けなくなってしまうと、クリプトキーパーは動けなくなったタマバチを内側から食べ、頭を食い破って外に出ていく。