【11月19日 東方新報】中国の吉林省(Jilin)と黒竜江省(Heilongjiang)にまたがる老爺嶺(Laoyeling)南部に、アムールトラとアムールヒョウのための国家公園のテスト区が設置された。2020年には世界最大のアムールトラ・アムールヒョウの自然保護区に発展させる計画だ。

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 テスト区は総面積146万ヘクタールで、自然保護区7か所、国家森林公園3か所、国家湿地公園、国家級水種質資源保護区それぞれ1か所が含まれる。今月11日には、吉林省琿春(Hunchun)で乱獲密猟違法行為の取り締まり集中アクションがスタート。こうした活動により、絶滅にひんするアムールトラとアムールヒョウの生存、生息、繁殖の安全を確保していくという。

 テスト区の設置で、反乱獲密猟アクションに従事する巡回員の年間巡回距離は7457キロから16万8386キロと21.6倍に増加。この集中アクションにのべ5万人が参加、7000台以上の車両が出動している。

 すでに9800以上の罠を撤去し、23人の密猟者を摘発した。そして300か所に餌場を設置し、140匹以上の野生動物を救出、120頭以上のハナジカを返した。また、1700の自然資源監視カメラを設置し、1000回にわたるアムールトラとアムールヒョウの撮影と10万回以上のハナジカなど野生動物の活動の撮影に成功している。テスト区内でのイノシシ、ハナジカなどの野生動物の撮影頻度は50%以上増加しており、明らかに密猟が減り、大型有蹄(ゆうてい)類の数が増えていることが判明している。

 テスト区を設置して以来、トラが人を襲う事故はなく、自然生態系本来の姿がより完成してきたとみられる。中国東北部とロシア極東に生息するアムールトラは、世界絶滅危惧種に指定され、その個体数は一時500頭にまで落ち込んだといわれている。しかし、その原因はアムールトラの自然界での繁殖力の低さに加え、美しい虎皮や漢方薬剤としてトラの骨や肉を求める密猟者に狙われやすいからだった。

 中国はこの数年、野生動物保護工作に力を入れており、黒竜江省ハルビン市(Harbin)にあるアムールトラの保護公園では繁殖計画に成功し、20頭あまりが飼育されている。しかしながら、英通信社ロイター(Reuters)などによれば、この繁殖計画には相当の費用がかかり、費用調達の名目で園内では「虎骨酒」(1000ドル=約11万円)などの土産品が売られている。

 1993年以降、中国は漢方薬剤としてのトラの骨やサイの角の利用を、医療研究目的など特殊な例をのぞいて禁止する方向で調整してきたが、ここにきて野生動物保護資金調達のためという名目で、トラの皮や骨の利用制限が解除に動いている。実際のところ中医薬におけるトラの骨などには代替物があり、必須のものではないが、いまだ華人圏では珍重されて1キロ当たり5000元(約8万円)から9000元(約14万円)相当の値がつくという。

 中国のアムールトラの繁殖・保護計画の推進は、それにかかる膨大な資金の問題があり、アムールトラを絶滅危惧種に追い込んだ漢方薬剤としてのトラの骨利用をその資金調達手段として復活させるという矛盾に直面しているともいえる。(c)東方新報/AFPBB News