【10月19日 東方新報】ジャイアントパンダを保護し、繁殖を進めるための広大な「国立パンダ公園」計画が中国で進んでいる。繁殖率が低く、野生の頭数が少ない「国宝」のパンダを、国を挙げて守ろうとしている。

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 パンダ国家公園管理局の向可文(Xiang Kewen)局長は10日、「パンダ国家公園総合計画の立案はすでに完成し、関係法案を制定する段階に入った」と発表した。

 国立パンダ公園は四川(Sichuan)、陝西(Shaanxi)、甘粛(Gansu)の3省にまたがり、面積は2万7100平方キロ。既存のパンダ保護区や、その他の自然保護区をつなげて拡大したもので、米イエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)の3倍近い面積となる。このエリアには野生のパンダ1629頭が生息。公園整備に関する予算は今後5年で少なくとも100億元(約1530億円)と見込まれている。

 野生のパンダは1980年代の1200頭前後からは増加傾向にあり、国際自然保護連合(IUCN)は2016年、パンダを「絶滅危惧種」から「危急種」に引き下げた。それでも個体数が少ないことに変わりはない。さらに中国の経済成長に伴い、森林伐採や道路建設、自然災害などの影響で、生息環境は劣化。パンダは中国西部の山間部で小さな個体群ごとに分断された状態で生息している。パンダの出産頻度は高くなく、1度の出産で生まれるパンダはたいてい1頭。このままでは各個体群で少子化と頭数減少が懸念される。

 新たに誕生する広大な国立パンダ公園は、分断された生息地を接続し、個体群同士をつなげることを目指している。パンダたちは繁殖相手を見つけやすくなり、遺伝的多様性も保たれる。また、気候の変動で主食の竹がある地域で減少しても、他の場所に移動しやすくなる。

 中国の環境部門は2017年から「パンダ国家公園試行計画」を実施し、エリア内の山、河川、森林、農地、湖、草原を保全。向可文局長は「新たな採鉱や林地の占用、保護計画に適合しない建物を作ることを禁止し、取り締まりも強化している」と強調した。

「中国の顔」といえるパンダは国際舞台でも欠かせない存在だ。「パンダ外交」という言葉があるように、中国政府が諸外国と友好関係を推進する際、その象徴としてパンダを貸与している。今年6月、ロシアを訪問した習近平(Xi Jinping)国家主席は、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とともにモスクワの動物園を訪れ、中国から贈られたパンダ2頭を視察。クールな印象が強いプーチン氏が「パンダの話をすると、いつも笑顔になってしまう」と表情を崩した。

 東京・上野動物園(Ueno Zoological Gardens)で生まれた「シャンシャン(Xiang Xiang)」は観光客のアイドルとなっており、今年6月に中国に返還する予定が2020年末まで1年半延期された。2018年10月に安倍晋三(Shinzo Abe)首相と中国の李克強(Li Keqiang)首相が新たなパンダ貸与の協議推進で合意した後、日本国内では仙台市や神戸市など各地がパンダ誘致に次々と名乗りを挙げている。「国立パンダ公園」は中国でパンダの暮らしを守り、世界のパンダファンに笑顔をもたらす存在となりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News